稲作と日本人






 今日ふと思ったのが、
 「日清日露戦争において日本軍には大量の脚気患者が発生した」ということ。これ関連で、陸軍では森鷗外を筆頭に伝染病説が主流であり、実際にはビタミンB1欠乏が原因だったんだが当時はわからなかった、そのため対応が後手後手に回り被害を大きく拡大したという話がある。そして海軍ではたまたま玄米か何かを食べさせたら良くなったと。ただ明確な根拠はなかったようではあるが。


 ・ということは脚気の日本史を紐解いてみるとおもしろいのではと。
 そういうことで脚気は江戸時代には流行らなかったのではと思ってみると、実際にはけっこう流行っていたようである。年貢といえば米、米といえば白米。白米を食べることが普通になった江戸時代にはけっこうちょくちょく流行ったのが脚気だった。田舎の農民も年貢で取られはするが都市にでれば白米をたくさん食べられる、というので都市で脚気によくなっていた。
 じゃあ農民は田舎で脚気になっていなかったのかって、確かにあまりなっていた感じはない。なぜかって、恐らく玄米を食べていたのだろうと当たりを付けたがそうではなかった。食べるものは少なかったが少ない米と雑穀を食べていた。つまり米に雑穀であるアワやヒエなどを混ぜていたわけで、これによって脚気を(正確には脚気になることだけはかろうじて)防げていたということのようである。
 つまりこれは食べるものがないから英湯不足気味だからと言って栄養価の高かったろう玄米を食べることはなかったということを意味してもいる。そういう文化はやはり農村においてもなかったのだ。あくまで雑穀によって防いでいたということでしかない。
 「当時の飛脚は一日100キロ走っていたが食べ物は米と漬物だけだった」なんて記述があるようだが、それだけ過酷な飛脚が栄養価の少ない白米でがんばっていたとは考えにくいし矛盾を感じる。むしろ高栄養な玄米を食べていたと考えた方がリクツには合う気がする。いくらなんでも根性と白米だけではちょっと考えにくい。実際飛脚の平均寿命は30~35歳程度だそうであり、これはもう単純に栄養不足と過労死なんじゃないかというのが窺える。


 ・実はもうかれこれ10年ばかり玄米について(時々)調べているが、確かにこれはとんでもない数値を叩き出してはいるのだろう。ただそれはあくまで数値上の話であって、それによって脚気も防げるし治せるが、しかしそれはそれ。恐らくその江戸時代~明治時代の経緯を見ても恐らく伺われるのは、稲作文化が始まって数千年単位だろう、日本人はとうとう玄米を調理することができなかった、調理方法を確立できなかったし、それを発明することができなかったのではないかとみている。あれだけモノづくりに長けており、技術は高度で、縄文時代の遺跡からはいろいろと画期的なものが出てきてもいるその日本人がである。現代人は特に栄養学的なものがはっきりと数値的に確認できるのだが、じゃあ古代人がそれができなかったからといって栄養のあるものが全くわからなかったということはない。経験的にもわかったし、それが文化的社会的にも繋がっている流れはあり、各所で見ることができる。


 例えばパプアニューギニアの内陸部における人肉食は有名だが、海も遠く近くに野生生物も少ない彼らはそれ以外にたんぱく質を取る手段を持たなかった。それは何千年もの単位での彼らの文化だったかもしれないが、鶏が導入されて普通に食べられるようになるとあっさりと人肉食文化は廃れることになる。死肉を利用してでも少ないたんぱく質を取らなければ生きていけない事情がなくなったためである。逆に言えば彼らはたんぱく質は知らなかったかもしれないが、死んだ人の人肉を食べると当分は健康に過ごせるということは経験的によくわかっていたのだろう。


 そういうわけで、常に稲作が身近にあった日本人が敢えて玄米ではなく白米を食べてきた経緯はそれなりの理由があるということであり、彼らが古代人で栄養を数値的に知ることができないほどバカだった、というのは指摘として的外れだろう。むしろ栄養的にも困っていて雑穀なんかを頼ってでも栄養はなんとしても取りたかったのだが、しかし玄米だけはイヤだった、それも栄養豊富でビタミンB1があって脚気も防げたがそれでも拒絶してきたというのが正確なのではないだろうか。そしてそちらの理由の方を彼らは経験的・文化的によく知っていた、そして敢えて忌避してきたということでもある。農村が敢えて農作業の合間、忙しい中を手間暇かけて水車小屋を作って精米をしようとした、米とぬかをどうしても分離させなければ気が済まなかったというのはそれ相応の理由があるということである。


 ・じゃあ日本人は玄米を全く使わなかったかといえばそういうことはない。恐らくほぼ唯一の活用法が「ぬか床」だったと考えられる。これは戦国時代以来だから400年程度の歴史があるが、塩分とその浸透圧によって玄米のぬかから栄養だけを抜き取るというのが恐らく日本人の思いついた恐らくは唯一の正解例だったのではないだろうか。


 だから先ほどの例に戻ると、
 「飛脚が白米と漬物を食べていた」という記述には違和感があり、ちょっとおかしくないかと思えるが、もしもこの漬物がぬか漬けだったとすればけっこう話は違ってくる。玄米に豊富に含まれる栄養分を白米ではなく実は漬物の方から補っていたということになるのだから。







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