キャバクラ建設事業






 ところで海上自衛隊ってのは海賊みたいなもんで(失礼)、陸が近くなってくるとものすごくテンションが高くなっていき、
 「よっしゃあああ、酒が飲めるぞおー!!!」
 というような一種独特な空気感ができていく、そしてなんとなくその空気感が好きだった。まあ上陸して酒場に入って、ビールこねえかなーまだかなーと待っている間が一番楽しいのかもしれない。キツイ仕事の合間に飲むビールのうまいことといい、そしてガハハハというような豪気な笑いといい、やはりどちらかといえばなんか海賊っぽいというか、海にいるとそういう気質になるのかもしれない。特に海生活っていうのは完全なる浦島太郎になるみたいなところがあるもので、そういう浦島太郎恐怖症みたいなものを漠然とながらみんななんとなく抱えていたような気がする。
 子どもが小さい時に仕事で海外へ出て、帰ってみると大きくなっていたが「おじちゃん扱い」で焦ったなんて話はそう珍しくもない話である。


 ・でそういう人らに連れられてキャバクラによく行ってた時期がある。
 率直に言えばどういう感想かって、
 「うわ、この酒えっらいまずいなあ……オレこんなまずい酒飲んだことがないんだけど。黒霧島か。覚えておこう(スマホにメモ)」
 とか、
 「酔っぱらった頭で知らん人といちいち話題を考えて話すのがキツイなあ。なんでこんなところがそんなにおもしろいんだ??」
 とか。
 「うわぼったくりバーだ。どうしよ」
 とか、まあ思い出してみるとろくな記憶がない。


 ・しかし考えようによっては、こうしたろくな記憶がないという事態も人生にとってはプラスに作用するところがあるんじゃないだろうか。
 単純にキャバクラなんてお金と時間のムダだから多分もう一生行かない(なんでわざわざ酔って鈍った頭で話題を考え出して気を遣わないといかんのか)というのが一つ。
 世界一まずい黒霧島だが、実際買って飲んでみると実はこれとんでもなく美味しい。しかも安い。ロックでもストレートでも美味しい。問題は超薄い、水で割りに割った水割りで飲ませるのが悪いのであって、黒霧島は悪くない。そういう意味ではキャバクラでもいい出会いはあったのだ。(最も最低な部類の感想な気もするが(笑))。という事情が一つ。


 そして本題でもあるのだが、多分人という生き物はキャバクラを作りたがる生き物でもあるんじゃないだろうか。それは別に女性に会うためとかいうわけではない。例えば本が好きなら、本をしこたま買い込んで家に無意識に図書館を作ろうとする傾向がある。考えて見ればそれこそが人の根源的欲求としてのキャバクラ建設事業みたいなもんで、近所に図書館があるなら本との出会い系ってことで図書館でべつにいいじゃねえかといいたいところだがそれでは飽き足らず、我が家にしこたま好きな本を買い込んで引きこもる。そういうことをやりたがるのが本好きである。
 しかし別にこれは本好きじゃなくても大なり小なりあるんじゃないかなあと。ゲームが好きならゲームを借りてやるから家でやるになるだろうし、ペットが好きならネコカフェとかフクロウカフェとかあるらしいけど、それが昂じて……というのもあるだろう。そういう傾向であり性向を人という生き物はどうももっているらしいということ。
 そしてそういう方向性の先で「あーもういいわこれ懲りましたわ」といったん思えるっていうことは人生にとって大きな影響があるんじゃないだろうか、とふと思ったわけである。


 ・「人は年を取ってから遊びにハマるとなんとやら」
 なんていうものの、年を取るまでそういう経験がもしも全くなかったとすれば、ひょっとした拍子に本格的にキャバクラにのめり込んでいた可能性は大いにある。だから本を買ったりして「あーまたキャバクラ事業やっとるわ。懲りないなあ」なんて自嘲するとか冷静に見られる視点を獲得しているか否かっていうのは、人生において意外とバカにならない影響力をもっていたりするんじゃないだろうか。だから若い時にいろいろ経験して、いい感想悪い感想いろいろあるにしろ、これは好きだなこれは嫌いだな、苦手だなとか。あーこれ意外と地味にめんどくさいわとか。そういうことを経験しておくのは、直接何かに役に立つとは思わないが、直接役に立たないところで案外地味に役に立っていたりするんじゃないだろうか。


 こういうのは例えば勉強したものが直接点数になって役に立つ……というほど直接役に立つものではないが、しかし全く役に立たない……というほど全く役に立たないというものでもない。そういうどっちつかずの立ち位置で地味に役に立ってるものも世の中いろいろあるのかもなあ、と思ったという話。





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