・「人という字は人と人とが寄り添うから人という字になります」なんてよくいうのだが(これあまり好きな物言いではないのだが)、人に関しては「おおーうまいこと言いおったな」程度のことでしかないが、木に関してこのことというのは死活問題なのではないかということをふと思った。
 というのも、木というのは山の斜面に生えてくるわけだがたった一本では大したことができないわけだ。枝が落ちてきても引っかかることができず、葉っぱが運よく引っかかったとしても次の瞬間には吹き飛んでしまうだろう。山の斜面というものに対して木というものが一本生えたところで、何にもならないというのが木というもののもつ切実な事情なのだろう。となると、どうにかして二本目に生えてきてもらいたいなというのが木の持つ潜在的な願いであると言える。


 ・そうして時間が経つと二本目が生えることになるのだが、一本目に対して二本目がどの位置に生えてくるかでこの二本の運命というのが大きく異なってくることになる。
 例えば二本目が一本目と隣接して生えてきてその間隔が1センチもないような場合、二本とも成長するわけだから近い将来必ずどちらかがどちらかを圧迫することになるのだ。こうなると意味がないどころかかえって有害であり、あまりにも近すぎるがためにどちらかがどちらかを殺さなければならないことになる。せっかくの幸運もこうなっては不運というか凶になる。こっちが死ぬかあっちが死ぬかどちらかを選ばなければならない。
 とはいえこういう場合は余程の場合であって、恐らく根から「オレの近くは生えるんじゃねえ」という何かの物質が出ているがために、そうした不幸な事態はかなり減っているに違いない。


 ・これが10センチ程度感覚が開いていると、大吉である。特に斜面に対して平行であればあるほど大吉である。これが何かって、斜面の上から転がってきた小枝が引っかかって止まってくれるわけで、小枝が5~6本くらい引っかかってくれれば後はそこに葉っぱが積もっていくのを待つだけである。こうして腐葉土を蓄えていき、大きく成長するのを待つというのがどうも木のもつ理屈でありベストなシナリオであるらしい。そうして二本ともに成長していって、いずれは二本ともに大きくなる。多少窮屈だがそれでも最初の二本で殺しあうよりかは余程マシであるといえる。
 ところで二本目が平行でなかった場合はどうか。二本目が一本目の後方に位置する場合はやはりあまり運がいいとは言えない。一本目に向かって枝が落ちてきても大して引っかかりもしないわけだから、二本目が後方にある意味も大してない。当然葉っぱも貯まるということがない。こうなっては二本とも大きくなりたくても大きくなることができない。


 ・しかしもしもこれに運が見出せるとすれば、そこそこの大木が倒木となった場合に一本目がかばってくれる(木がかばってくれるという表現も変だが)場合というのが挙げられるだろう。これというのは木にとっても死活問題で、倒木とか枝が折れるとか、そういう他の木にとっての不幸がこちらにとっての幸いとなるのが木というものの宿命だと考えると、そういう不幸を極力最大限有効活用しようというのが木の基本戦略になる。
 ところがあまりにも大きな木が倒れてきた、あるいはそのまま転がってきた場合、こちらまでやられる羽目になりかねない。人の不幸がこちらの幸せとはいかない、人の不幸がこちらの不幸になってしまう。じゃあこれをなんとかできないか、こちらにとっての最大の幸運に変えられないかといえば、それはもう一刻も早くこちらが大木になる他ない。こちらが大きくなればそこそこの倒木であっても防ぎきることができるようになるだろう、そして耐えきれれば大木はそのまま途轍もない量の肥料に化ける、従ってこの時点で不幸を幸運へと化けさせることが可能になるのだ。もちろん二本目も大きくなってもらって、倒木によるショックを二本で分散するというのも前提に含まれることになる。


 ・まあそう考えていくと最高のシナリオは、二本に前方で倒木を防いでもらいつつ自分はその後方に位置する。巨木を食らってもらって青息吐息の二本を見ながらその莫大な肥料だけはもらいつつぬくぬくと生きるというのが最も良いということになる。
 そういうわけで、「人という字は人と人が寄り添って云々」ということを冒頭に書いたが、これを木に関して考えるならば事情はそう生易しくないのだと。自分にとって二本目がどこに生えてくるかでその後の運命は全く違ってくるし肥料と自身のその後の成長性まですっかり違ってくることになる。二本目が必要不可欠、そうして人の不幸を極力自身にとっての幸運に変えるべく生きるわけだし、なんなら他の木に頑張ってもらっている隙に肥料だけ横取りってのが最もいいと。つまりある意味陣形とかフォーメーションという概念の萌芽みたいなものが見て取れるし、一本では大したことができないが二本あればそこそこの仕事ができるという意味での関係性の大切さというものの概念も見て取れると。


 木なんて何も考えずただ突っ立って生えてるだけに見えるが、よくよく見ていくと奇妙なものを持っているもんだという話。






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