あるくと






 以前あるくとという歩数計アプリにハマっていた時期があった。キャラとクエストをこなすのがおもしろかったので、けっこうな遠方までふらふら歩いて行ってはキャラを集めると。おもしろかったんだが当時のキャラはほぼ集めたのと、新キャラがどっと出てめんどくせえなと思ったタイミングでやめてしまった。ついでに懸賞も全く当たらなかったし。100%当たらなかった(笑)


 ・そんなある日、だからもう半年くらい前の寒い冬の日。
 夕方の暗くなった時間帯に歩いて出かけた。時間は5時半~6時くらいか、暗くなったな、薄暗くなったなという時間帯だった。


 とあるおじいさんとすれ違った。
 紺色の帽子をかぶり、いかにも農作業中というようなシャツを着ていた。年に似合わずか似合ってか、背筋もぴんとしておりしゃきしゃきと歩いていた。
 そのおじいさんというのはある家の人だというのはその顔つきからなんとなく察せられた。それに狭い地区のこともあるし、大体の人は顔を見ればわかる。まして集合写真などもあるわけだし、数回くらいは写真で見た顔でもあった。


 「ちわーす」
 と声をかけると、
 「ああ、こんにちは」
 と返ってきた。いかにも一仕事終わった、一日が終わった、さて帰るかというような、いかにもやり終えたといったようないい顔つきをしていた。
 実はその時そのじいさんにオレは何とも言えない違和感を感じていたのだが、オレは当時あるくとに忙しかったので(笑)、そのまま通り過ぎてそのことをすっかり忘れてしまった。新キャラゲットだぜ!みたいなことをやっていた。


 ・と、いうことをふと今日思い出して確認してみたところ、
 「ああ、あのじいさんは10年前に死んだよ」
 (笑)
 ああですよね~と(笑)うすうすそう思ってたんだが、やはりそうかと(笑)


 この話のミソは実は幽霊に出会ってた、怖いな~という話じゃなくて。
 なんとなく恒例になってる仕事があると。で田んぼとか見に行く。ああ何事もなかったわ、あるいは何かあったわと。そしてその確認を終えて家に帰る。あー今日も一日終わったわといういい表情をしているじいさん。
 「ちょっとちょっと。あんた10年前に死んどったがね」
 「あ、そうだった忘れちょったわー」
 みたいな。
 そういう一日のやらなくてはならない習慣と、それを終えた充実感というのがあって、それを人は死んでからもやり続けるってのがものすごくおもしろいなと。ものすごくさりげない世界で、そのことってのはどうやら起こっているらしい。


 それこそうちの死んだじいさんも、
 「ちわーす宅配便です」
 「はい……(名前を書く)、これでいいですかね」
 「はい結構です、ありがとうございました!」
 「はい、ご苦労さん」
 みたいなことを誰も留守の時間帯にもしかしたらやっているかもしれないし、その時その人は死んだことすら忘れているかもしれない。で、そういうさりげなさをものすごくおもしろいなと思って「クスッ」と笑ってやっているかもしれない。そういうことがこの世界と同時並行の世界で起きているとしたら、これものすごくおもしろいなあと思ったというお話。





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