フランス語桃太郎その34






 ということで舟に財宝を積み込んだ一同でしたが、でも考えてみれば村を襲って略奪していたのに財宝がたくさんあるっていうのはおかしくないかと(笑)それこそ城を襲って強奪するくらいなら別でしょうけど、そのくらいの規模になると一人と三匹で国を亡ぼすくらいの話にならないといけない気がします(笑)ツッコミどころ盛りだくさんな気がしますね。

 そしておじいさんおばあさんのところへ場面が切り替わったのでした。
 ①≪Pourvu qu'il ne lui soit rien arrivé……pourvu qu'il soit sain et sauf……Quand va-t-il rentrer?≫dit la mère.
 ➁Le père qui guettait hors de la maison poussa un cri de joie:≪Oh regarde! C'est bien notre Momotaro!≫
 両方長いですけど、今回も二文ですね。


 ①≪Pourvu qu'il ne lui soit rien arrivé……pourvu qu'il soit sain et sauf……Quand va-t-il rentrer?≫dit la mère.
 前半中盤後半で分けて考えます。
 Pourvu qu'il ne lui soit rien arrivé……
 ですね。

 pourvu(プービュ)はpourvoir(プーボワール)からきています。そのまま見ると、英語で言うところの「forsee」みたいな意味になりそうですが、実際にはprovideの意味となります。「~を持たせる、与える」ですね。
 ここは「pourvu que SV」という慣用句ですね。ここでVが接続法なら「~しさえすれば」の意味となりますが、または「~だとよいのだが」の意味もあります。今回はこちらの意味ですね。

 ・恒例の余談と脱線ですが、そう思ってprovideをみると、provided thatあるいはproviding thatという形で「もし~ならば、~という条件で」という意味は持っているようですね。「~だとよいのだが」の意味はこっちにはなさそうですね。

 ・さて、そのqueの中身ですね。
 わかりにくいのでまずいろいろ省きますと、
 il lui soit arrivéとなります。
 soit(ソワ)はêtre(エートル)が接続法になったものでilに合わせています。
 arrivé(アリヴェ)はarriver(アリベー)が過去分詞になったものですね。このarriverは普段は「到着する」の意味でarriveの意味でいいんですが、非人称のilと組み合わさって「~が起きる」の意味となることもあります。ここがそれなんですね。
 そしてlui(リュイ)ですが「彼に(桃太郎に)」の意味となります。フランス語ではこういう目的語(ここでは特に間接目的語といいますが)が動詞の前に出てくるわけですが、そのためにこの位置にluiが入っているわけですね。


 これが否定文となります。
 il ne lui soit rien arrivé
 となっているわけですが。
 ne~rienこれで「何も~ない」という意味になります。このrien(リヤン)というのはanythingやnothingの意味があるわけですね。
 これで
 「彼に何も起こらないように」
 の意味となります。
 特に接続法は「主観的な内容や願望を表す」ものなわけですが、そう思うとこういう祈りとかは接続法と特に相性がいいように思います。

 ということで前半ですね。
 Pourvu qu'il ne lui soit rien arrivé……
 「彼に(桃太郎に)何も起こりませんように」となります。

 ・次に中盤戦です。
 pourvu qu'il soit sain et sauf……
 これもまたpourvu que 接続法ですね。「~だとよいのだが」です。
 soit(ソワ)はêtre(エートル)の接続法でした。
 sain et sauf(サン エ ソフ)はこれで「無事に」という慣用句ですね。
 細かく見て行くと、
 sain/saine(サン/セーヌ)は「健康な」です。
 sauf/sauve(ソフ/ソーブ)は「無事な」の意味です。

 訳しますと、
 pourvu qu'il soit sain et sauf……
 「彼が無事でありますように」となります。前半戦は非人称のilで「彼に」のluiがメインという感じでしたが、ここはそのまま「彼が」の意味ですね。

 ・後半戦です。
 Quand va-t-il rentrer?≫dit la mère.
 Quand(コン)はWhenの意味です。
 そして疑問文に合わせてva-t-il となり、VSとなっています。間の「t」はないと「バ イル」となって繋がり悪いので、「バ ティル」として繋がりを良くするためだけに入っているだけのもので、意味はとくにありません。昨日もこういうのがet l'onかなんかで出ましたね。
 そしてva(バ)はaller(アレー)からきているんですけど。まあgoの意味ですね。
 これが組み合わさって「aller+不定詞(動詞の原形)」となっているわけですね。久々に出ましたがこれ近接未来です。英語で言うところのbe going toですね。すぐ近くの未来を指します。
 rentrer(ロントレー)は「帰る、帰宅する」の意味です。

 合わせますと、
 Quand va-t-il rentrer?≫dit la mère.
 「いつ彼は返ってくるのだろう」と母は言いました。
 となります。
 まるで近々桃太郎が返ってくることを見越したかのような近接未来ですね。
 そしてdit la mère.ですが、dire(ディール)「言う」などの言葉は≪≫(ギュメ)の後などによくつきます。
 それで「母に言いました」となりそうですが、これVSになるんですね。なのでそういう倒置がdireなんかにはよくあるということを見越して、「母は言いました」と訳すというのが重要と思います。


 ということで①ですね。
 ①≪Pourvu qu'il ne lui soit rien arrivé……pourvu qu'il soit sain et sauf……Quand va-t-il rentrer?≫dit la mère.
 「彼に(桃太郎に)何も起こりませんように……彼が無事でありますように……いつ彼は返ってくるのだろう」と母は言いました。
 「いつ」の前に「それにしても」なんかが入るともう少し繋がりがいいのかなと思います。


 ➁Le père qui guettait hors de la maison poussa un cri de joie:≪Oh regarde! C'est bien notre Momotaro!≫
 これも主語はLe père(ペール)で「父」なんですが。
 それを後から修飾しています。
 qui guettait hors de la maison 
 qui(キ)はwhoですね。
 guettait(ゲテ)はguetter(ゲテ―)からきています。「~を見張る」の意味ですが、「うかがう」という感じでいいと思います。
 hors de~は「~の外」の意味です。hors(オール)でoutsideの意味があります。
 ですから、
 Le père qui guettait hors de la maison 
 「家の外で(あたりを)うかがっていた父は」となります。
 ちょっとSの部分が長いので、ここは省きつつ行こうと思います。

 
 Le père poussa un cri de joie:≪Oh regarde! C'est bien notre Momotaro!≫
 poussa(プサ)はpousser(プセー)からきていますが、pushの意味ですね。先日もやりました。これで「(声を)発する」の意味があります。
 これ、pousser un cri de joieで慣用句ですね。「歓声をあげる」の意味があります。pousserが単純過去なので、それに合わせると「歓声をあげた」となりますね。

 regarde(ルギャルドゥ)はregarder(ルギャルデー)からですね。look atの意味です。
 これが命令形となっているわけですけど、形としてはilが主語、もしくは命令法単純形ですね。奥さんが近くにいるからと言って「おい、おまえ見てみろよ!」という意味でのtuとかvousに対応している形ではないんですね。ついでにこのregardeも他動詞なので、正しくはregarde-leとかになって「あれを見ろよ」という意味になるのが正確なのかなと思います。

 C'est bien(セ ビヤン)ですけど、これは訳すの難しいですね。
 That's goodとかの意味で考えるといいかなと。「よっしゃ、やったぜ」という感じで捉えるといいと思います。
 notre(ノートル)「我々の」は桃太郎が単数なのでnotreの形なんですね。「桃太郎一行」の意味だったとすれば、イヌとサルとキジがくっついていますので、複数形となりnos Momotaroになったと思います。ということはここに至るまでに仲間とは別れたのでしょう。


 ということで訳します。
 ➁Le père qui guettait hors de la maison poussa un cri de joie:≪Oh regarde! C'est bien notre Momotaro!≫
 「家の外をうかがっていた父は、歓声をあげた。
 『おお、見てみろ! やった、我々の桃太郎だ(ぞ)!』」


 ということで今回も最後に復習して終わろうと思います。
 ①≪Pourvu qu'il ne lui soit rien arrivé……pourvu qu'il soit sain et sauf……Quand va-t-il rentrer?≫dit la mère.
 ➁Le père qui guettait hors de la maison poussa un cri de joie:≪Oh regarde! C'est bien notre Momotaro!≫


 ということで前回からの流れですね。
 Les Ogres, reconnaissants, rendirent au pays tout ce qu'ils avaient pillée et l'on remplit le bateau de Momotaro de toutes sortes de trésors.
 À la maison, les vieux parents attendaient et priaient:
 ≪Pourvu qu'il ne lui soit rien arrivé……pourvu qu'il soit sain et sauf……Quand va-t-il rentrer?≫dit la mère.
 Le père qui guettait hors de la maison poussa un cri de joie:≪Oh regarde! C'est bien notre Momotaro!≫



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