ということで前回の話は、蒙傲(もうごう)が范雎(はんしょ)と秦王の間を引き裂くという話でした。
命がけで取り返そうと思いますと言った時に、「じゃあお願いします」と范雎は言ったんですが、もしも策があれば「まあそう急がれるな。策がありますから」と言ったはずです。そうでない以上は特に策がないんだろうなとなるわけで、秦王は范雎への気持ちにやや冷めてしまったと。
とはいえ、この時代のことですからやりますと言われれば特に親しくもない限りは「じゃあがんばんなさい」というのが普通でしょうから范雎をその点で責められないでしょうし、それを踏まえずしてそう解釈してしまった王もやや早計かなと思います。その意味での計算が蒙傲にはあったということかなと。
昭王は既に兵を休め軍備を一新させて、再度趙を討とうとした。武安君(白起)は言った。
「できません(なりません)」
「(趙は)前年に国が貧しくして蓄財もできず民は飢えていた。貴公は百姓の力を測らず、軍の食糧を増して趙を滅ぼすことを求めたのだ。今私は民を休め、士を養い、糧食は蓄えている。三軍の俸禄は以前に比べて倍するものほどもある。それなのに不可という。それはなぜだ」
武安君は言った。
「長平のことですが、秦軍は大いに勝って趙は大いに敗れました。秦は大喜びしましたが、趙は恐々としております。
秦民のうち死んだ者は厚く葬られ、傷ついた者は労役に出た者は互いに慰めあっており、飲食に饗応してはその財を浪費しております。
一方趙の者で死んだ者は収容することもできず、傷つく者は療養もできず、涙を流して相悲しみ、力を合わせ憂いを同じにし、田を耕すのに邁進して休むこともなく早急に作り上げては、その財を生んでいるのであります。
今王は軍を発するその前に倍するとおっしゃいましたが、この臣が思いますには、趙の守備もまた恐らくは十倍するとみていいでしょう。長平より以来、君臣が憂いを共にし、早朝から朝廷に出かけ、遅く退勤し、辞を引くくし贈り物をたくさん携えて四方に使いをやって、親しみを燕・魏に求め、よしみを斉・楚に連ね、思いやりの心を積み心を合わせては秦に備えるのを務めとしております。富は内に満ち、外交は外で成っております。そのような時に趙を討つべきではありません」
・紀元前260年の長平の戦いで趙を破った白起が、趙を攻めるべきでないという話ですね。これによって50万近くの兵士が秦によって殺害されています。まあ働き盛りの人が兵に雇われておりますので、そういう人らを完全に失った趙がいかに傾いたかは想像に難くないですね。なので、白起のいう戦機というものを考えるならばそのまま趙を滅ぼす、もしくはものすごく時間をおいて趙を滅ぼすということになるでしょう。前者は范雎(はんしょ)が勝手に和議を結んでしまったので、もう後者しかないと。
・ここまでいくと兵法も「心」というのが関係するというのが意外というか。
「心をひとつにして」とか「心を合わせて」とかいうのが強くかかわるものだっていうのが意外ですね。いかにも物でないどころか精神的な抽象的な、いや曖昧な話だと言ってもいいものですので。ところが現に秦が趙を破れない理由、それはどこにあるかといえば趙の人々が心を合わせてこの危機を乗り切ろう、秦や憎しの心で一つになっている、まさにそれが原因で破れないのだと。
頑丈な武器、英気を養った精強な軍隊、圧倒的な勢い。そういうものを秦王は列挙していますが、それだけでは破れないのだと。いってみればそれだけだと加点主義です。いかに自軍は強いのかということを並べていく。
しかしそれだけではなく、減点主義もある。20万もの人々を生き埋めにした非道な秦軍に負けるわけにはいかない。死んでも抵抗する。そういう気持ちが一つになって徹底抗戦をする。そうしたものが秦の当然勝てるだろう戦力に対抗し始める。そして白起は秦はそういう趙に勝てないという。そして秦はその通り、勝つことができない。
この記事へのコメント
あき
突然の書込み大変失礼致します。
この度は今一度 皆様に知って頂きたい事があり、誠に恐縮ですが書込ませて頂きました。
マスコミの扇動が露骨になる中、2009年この世論誘導により誕生した民主党政権の3年間は、公約をほぼ全て反古にし(公約に反し消費税も増税)、
異常な円高誘導で国内企業を空洞化した結果、株価は8千円代まで下がり、日本経済は破綻寸前まで追込まれた事は周知の通りです。
ミスリードが行われるこのコロナにおいても、日本の死者数は世界でも圧倒的に少なく、G7で最も抑制に成功しており(データによりコロナで死んでいない日本人は99%)
倒産、失業率と突出した低さをキープし(世界2位の補償額)、ワクチン接種回数は1億回を超え現在世界5位の速さですがこれも正しく報道されず、
メディアは毎日不安を煽り、倒閣の為経済を止める方向へ誘導を続けています。
自民党が全て良いとは言えませんが、データに基づいた客観的事実や、対策を限界にさせている現法改正に対する民主党の妨害、数々の不祥事も民主党は報道されず、
2009年同様の政権交代を再現すべく、共闘し世論誘導を仕掛けている事を 一人でも多くの方が気付き、
自ら情報を拾い判断する大切さや、
国民1人1人の投票で政権をも決定する重さがある事をどうか知って頂きたいと思い、こちらを貼らせて頂きます。
https://pachitou.com/2021/08/15/国民の敵マスゴミとの戦いの正念場/
長文、大変申し訳ありません。