過去と未来






 人は何に向けて生きるかといえば未来に向けて生きる、あるいは生きている、とこうなる。ところが実際にはどうなのかといえば、それはどうも怪しいなとふと思った。大体の場合、実際には人が生きているのは過去に向けてである。未来に向けて生きながら過去に向けて生きている、という表現が非常に難しいのだがこれはどういうことなのか、といえばつまり人は思ったよりも概念的に、つまりは頭でっかちに、いや正確には頭でっかちな世界で現に生きているということを意味する。頭でっかちな世界を生きているのにも関わらず、本人はその事に全く気付いていない。しかし人は生きる以上は未来を向かざるを得ない。そしてそれと同様に、いやそれ以上に、人は過去を向いて生きていたいのだ。これはつまりどういうことなのか。それは恐らく現代であり現在……その何ら面白みの感じられない現代であり現在の先に輝かしいはずの「未来」が位置することなど到底受け入れられないということを意味する。はっきり言えば拒絶しているのだ。そんな下らない、取るに足りない、そして当然やってくるだろう不可避な未来を受け入れたくないのだ。しかしそれは受け入れないということを意味しない……というよりはっきりとそれを拒絶することは自殺そのものを意味することになるだろう。
 であるから、自殺しない代わりにそのクソみたいな未来も受けいれない……そうなるとどういうことになるかといえば、できる限り甘ったるく栄光に満ち満ちた未来の到来を望む、とこういうことになる。それはつまりどういうことかといえば、「優越」これがキーとなる。人はクソみたいな未来を受け入れる代わりに、優越感を得ることを選ぶ。それはすなわちどういうことかといえば、例えばこういうことになる。こいつはオレよりも年下だった。であるがゆえにオレはそれを当然上回る生き物であると認識する。その他特に何も要素などないんだけど、ただこの一点においてだけ「優越」しており、また優越感を少しでも感じることができるのであれば、喜んでそれを享受する。そういうことが起こる。これというのは「溺れる者は藁をもつかむ」のとほぼ同様で、否応なく未来に進まざるを得ないのであれば、仕方ないから進む、しかしそれと引き換えに少しでも「優越」だけは頂いていくぞという姿勢である。これというのはメーテルリンクの『青い鳥』にある生まれる前のお土産みたいなものをそのままそっくり表しているような感じで面白いと思う。この「優越」はその意味で言えば大人気商品なのだ。イヤな未来にどうしても進まないといけないというのであれば、他にもっと良さそうなもの、便利そうなもの、あるいは物ではなくで概念、そういう存在というのはありそうなものなのだが、驚くべきことに大半の人はその手に一つだけ握っていっていいよと言われているのにも関わらずその「優越」を手にすることを選ぶ。そして選び取っていることに気づかぬまま生きる。そして要所要所でそれを選んだことのツケを取らされることになっている……すなわち、優越感のためなら金などの実利もかなぐり捨て、あるいはもしかすると竹馬の友となれるかもしれない、それどころかものすごい恩恵があるかもしれない、そういう可能性ですら「優越」という一語のために総て捨てることを選ぶのだ。そしてそういう生き方を選んでいる人というのはものすごくわかりやすい。恐らくは今までの社会というのはこれのつながりであり、これの連鎖、それこそが本質なのではないか、というほどこの現象は多々見受けられる。そしてそれは若いからといって全くの無縁というわけではない……過去の栄光をすっかり捻らせてしまっており、「それ」、そういう「何か」をどうやら誇りとしているらしい、それを鼻にかけている例というのは決して少なくはないものだ。その本質が例えば努力によって金メダルをもぎ取ったというようなものではなく、「オレはあいつよりも一個年上だった」とか「あいつよりもかけっこ早かった(から最下位は免れた)」とかそういうものだったとしても、それをもっている姿勢、生きる姿勢を決して崩しはしないのだ。
 奇妙なことだけどオレ自身はそれを免れるどころかその最大の渦中にあって、要するにかけっこ最下位とかは当たり前でそれでもなんとかやりくり(笑)して生きてきたものだったけど、この「優越」を免れることに成功しているというのは不思議なものだと思っている。恐らく、努力して順位を一つずつあげるとかやっていては逆にこの「優越」にしがみつくことになった気がするし、事実マラソン大会で唯一ドベから一つ上になった時の安心感というのは今でも覚えているくらいに結構鮮明な記憶になっている。そこで満足していたら(別に満足とかそういうことではなかったのだが)オレも強烈なそっち側に回っていたのではと思う。まあここのところはよくわからないし、もっと考えてみたら面白い結果がでてくるかもしれない。とりあえず思うことは、最もその渦中にあったやつがそれをかえって免れる、台風の目現象みたいなものはあるんだろうなというのが興味深い。あるいはずば抜けた能力で常に一位とかもぎ取っていたとしてもまた違う結果が、あるいは同じ結果があったのかもしれない。



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