新戦国策秦上1-1、孝公、孝公が衛鞅(えいおう)をいかに厚遇したかという話






 ということで今日から秦です。西周東周とやってきましたが、まあ周っていうのは昔の王朝でしかなく、権威はあっても実力はないと。それに比べれば秦は野蛮扱いされていましたが途中から実力に関しては他国を圧倒するほどになっています。一番早く中華統一を果たすのも秦です。いろいろと興味深い内容なのではと思います。


 衛鞅(えいおう、商鞅、しょうおうの方が有名か)が魏を亡命して秦に入った。孝公は衛鞅を相とし、商の地に封じ、そうして商君と号したのである(そのため商君鞅とも呼ばれる)。
 商君は秦をよく治めて法令はよく行き渡り、公平であり私心がはさまれることがなかった。刑罰は強大な者に対してもはばかることなく、恩賞は人の親近に関わることがなかった。法は太子にすら及び、その傅(ふ、教育係のこと)を罰した。
 一年の後、人は道に落ちた物を拾うことがなく、民は理由のないものを貰うことがなくなった。軍は強大になり、諸侯はこれを恐れた。ところが法は苛烈で恵みが少なく、ただ法をもって人々を従わせるだけだった。

 孝公の政治は八年に及び、病気になり立てなくなり、秦王の地位を譲ろうと考えたが、商君はこれを固辞して受けなかった。
 孝公は死に、恵王が代わり、国政に臨んだ。しばらくして商君は休暇を願い出て、自領である邑の商に帰った。
 人が恵王に説いた。
 「大臣が重くなれば国が危うく、左右が親しくなると身が危ういと申します(大臣に国を簒奪される恐れと、近親者に刺されることを言っている)。
 今や秦の婦人から子どもに至るまで皆商君の法を言っており、大王の法を言う者は一人もおりません。これでは商君が自領に帰って王となり、大王はそれによって臣となります。しかも商君はもともと王の仇敵です(先述の傅(ふ)が刑罰を受けた)。どうかご賢察ください」
 商君は帰った。
 恵王はこれを車裂きの刑(両足を牛車に付ける刑)に処し、しかも秦の人は誰も哀れむことがなかった。


 ・一発目から商鞅(しょうおう)の話ということは、いかにこれが重要だったかということをよく表していると思います。ただ、商鞅の改革がいかに重要ですごかったかということについては、詳しくは省こうと思います。とりあえず法を重視したということです。法治主義によって秦は栄えますが、同時にその苛烈さによって最終的に滅ぶことにもなります。ですので130年間はこの商鞅の改革が効いたということですね。 
 そして処刑した恵王もこれはすごいということで商鞅の改革はそのままにしています。
 商鞅
 孝公
 恵王(恵文王)
 張儀を登用しています。


 ・孝公が秦王の地位を譲ろうとしたというのは初めて聞きましたので、誇張かもと思いますし本当だったかもしれません。それを固辞したということがありながらも讒言は「あいつは王位を狙っている」という形でなされています。事実としては矛盾していますが、まあ讒言はこういうものですね。
 なので、韓信とかも同じですが、王位を示された時にそれを許諾しないということは自らの命を捨てるということと同義だ、ということはあるということだと思います。まあいきなり言われたとはいえ、じゃあ王位いただきますと言えないのはかつても今も同じでしょう。しかし結果的に見れば、王位を選ばなかったことが自らの死とイコールであると。


 商鞅は確かに素晴らしい改革者だったでしょう。そしてそれによって秦は栄え、六国を滅ぼし天下統一を成し遂げます。その改革、見通しの素晴らしさは比肩する者がいないと言っても過言ではないでしょう。いわば130年分見通したわけです。しかしそれによって自分がいかに恨まれていたか、それによって讒言を受け、処刑される末路に関しては考えもしなかった。足元を掬われたのが商鞅だった。一歩先すら見通せていなかった。


 ・それにしてもまあ讒言の内容の杜撰さですね。
 王になりたければとっくに譲ってもらってなっていたろうし。
 人々の怨嗟の声(えんさのこえ)が「誰も王のことは知らなくても衛鞅のことは知っていますよ」となるし。
 とどめには個人的な恨み。積み重ねとしてはでたらめばかりですが、しかしこれで讒言というのが成立してしまうというのが恐ろしい。蘇秦があちらこちらを行ったり来たりしていたりとか、周最(しゅうしゅ)がうまくいかなくても蘇秦のまねごとをして歩いていたりとか、それに比べると讒言というのがいかに手軽ででたらめ並べて、そして効力をもってしまうものかということですね。これはこれで一種の弁論術としてみるととてつもないものがあります。そして功臣がいなくなって地位を上げた者もいるでしょうし、それを思えば讒言というのはこの世界を渡る上での一種のてこの原理みたいなもので、少ない労力で大きな効果を上げる、ある意味では素晴らしいもののひとつなのかもしれませんね。





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