新戦国策1-24、ある人が周最(しゅうしゅ)のために趙の金投(きんとう)に韓・魏を攻めろという話






 ということで前回は溫(おん)という西周のとある土地の人が詩を引用して窮地を脱すると。自分の危機を救ってみせるという話でした。


 ある人が周最(しゅうしゅ、この時は斉にいた)のために金投(きんとう、趙の人)に言った。
 「秦は周最が魏を去って斉に行ったのを見て天下(の諸侯との間に密約があるのではないかと)を疑っております。そうして趙と斉とが戦うのをはばかっているのを見れば、斉と趙とが同盟を組むことを恐れて先手を打って斉と手を組もうとすることでしょう。秦と斉とが手を組めば、貴公の国は虚しいものとなることでしょう(滅ぶでしょう)。
 貴公には斉を救い、それによって秦を助けて韓と魏を討つ以上の手はありません。上黨、長子(じょうとう、ちょうし。黨は党の旧字。両方とも韓の土地)は趙が取るのみです。
 貴公は西の宝を秦より収め、南は土地を韓から取れば、魏はこれによって苦しむこととなるでしょう。かくして徐々に東に出れば、秦と趙とが同盟する結果となるでしょう」

 ・内容ですが、最後の一文はいろいろ議論があるようです。
 原文に忠実に訳すると、
 「貴公は東、(すなわち)宝を秦より収めて~」となりますが、趙の東は斉ですからこの記述はおかしいと。なので東は西と間違えたのではないかと書かれています。いろいろ可能性はありますし、そもそも文章が失われてない可能性もあるでしょうが、この文章自体が言いたいことが秦と斉両方と仲良くした方がいいという趣旨であることを考えると、
 「貴公は東の斉と、(西の)秦から宝を収めて~」というニュアンスで読み解く方が正確ではないかと思います。


 ・この話なんですが、このある人があくまでも周最のために言っているというところはミソでしょう。
 なぜなら、秦と斉との間で挟撃される可能性があるのが趙ですので、いくら南下していってもその挟撃される立ち位置は変わりません。強国と仲よくしとけというのは無難だし、まあ妥当な一言に思えるのですが、その実かなり魂胆が見え見えでいやらしいなと思えます。要するにいくら趙が領土を拡大しても、軍事的に強国となっても、秦と斉とが手を組めばあっさり撃破されかねないと。そういう状態を強国間を縫うようにしてやっていっても、表面上はともかくその実はかなり危ういと言えます。そうであるにもかかわらず、この親切な「アドバイス」が成立するということが実に危ういと思います。これにうかうかと乗るようなら趙も大変ですが、果たして乗ったのかどうなのか。
 恐らく、趙が軍事的に優位である時期に、その力を借りたいという思惑がここにはあるように思います。


 しかしこの作戦がその後どういう意図で周最のためであるのかは難しいですね。
 魏、その次斉に行っているということは外交メインで各国と仲良くというのは確かです。そして周が危ういのも確かです。恐らく、韓と魏に隣接しておりいじめられている周を助けるため、そしていじめている韓と魏をこらしめるためという意図があるものと思われます。そして秦からはいろいろ脅迫を受けていますが、それと対抗するために斉、あるいはもうひとつ趙からの助力を受けたいと。これによって秦からの圧迫にも対抗したいという思惑があるものと思われますが、まあ詳しいところはわかりません。
 とりあえず確かなのは、三国志で言うところの「逆賊董卓を討ってくれ」という献帝の依頼がどこかの君主にありました、というような話の性質とかなり近いものだなと思いますね。


 ・二点補足なんですけど、周最(しゅうしゅ)の「最」ですが「しゅ」と読むのが疑問でした。これ「もっとも」「サイ」とは呼んでもしゅとは読まなくないかと。他のサイト見てたら「周取」とあり、なんとなく納得するところがありました。難しい漢字でもその漢字に含まれている部分から類推できる場合というのは多々ありますが、この「最」もそういう感じで読める、という可能性がある。あるいは取と最とがあってもともとはそんなに違いはなかったがそのうち二つが分化していったという可能性もある。まあいろいろ可能性はありますが、漢字の成り立ちについて調べていくと案外おもしろいかもと思っています。


 ・周最という人は東周の公子ということですが、これだけ各国を行き来しているということ、そして戦国策の前半をほぼ占めていると言ってもいいほど出場していること、しかもあの周王朝(東周)の人ですから威厳というか権威はとてつもなく強いということ。そして戦国七雄の時代なのにまだ周として強い存在感を持っていること。いろいろと驚きがあります。しかもこの時代を考えると、孟嘗君とか楽毅、武霊王とかの記述と合わさってどこかに出てきそうなものですが、少なくとも私は本で見たことがない気がします(笑)戦国七雄の時代にまだ周があって強い存在感をもっていたことがそもそもあまり語られない。そこに結構強い違和感を感じています。まあ世界史の知識とかではほぼ必要ない話でもありますが(笑)
 ということで長いですが、後二話で東周編も終わります。



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