新戦国策1-20、ある人が周最(しゅうしゅ)のために祝弗(しゅくふつ)の話を聞くなと斉王に言う話






 ということでここのところ孟嘗君とその相手勢力、斉と秦の関係についてやってますが。この話今回も続きますのでまとめときます。
 呂禮(りょれい)という人が秦にいました。この人は秦の武将だったわけですが、斉の宰相にならんかと持ち掛けられます。これによって呂禮は秦と斉の友好の懸け橋になるということですね。決してこれは裏切りを意味するものではなく、当時の価値観ではそういうのがけっこう普通にあったと。ここ私の誤解がありました。
 で、そうなると斉の孟嘗君は地位が高かったわけですけど、この呂禮が邪魔になります。もう秦と斉とは友好国なんだから孟嘗君よりも呂禮が重要だよねとなると、孟嘗君がお払い箱になりかねない。そこである人が孟嘗君に献策したってのが、前回の趙をけしかけて戦争を引き起こそうという話です。これによって秦と斉とは戦争になり、呂禮はお払い箱になると。そういう話でした。内輪の政変が各国を巻きこんだ紛争になる、でもその方が孟嘗君にとってはいいですよと。結構相当エグイ話ですね。


 斉では、祝弗(しゅくふつ)の話を聞いて周最(しゅうしゅ)を他国へ追いやった。そこである人が周最のために斉王に言った。
 「周最を追放し、祝弗の意見を聞き呂禮を宰相としようとするのは、秦の歓心を得ようと思ってのことです。しかし予想に反して実際には秦が諸侯を味方につければ、そのまま斉を討とうとするのは必定です。もし秦と斉とが合わされば、趙は討たれることを恐れて兵を急に出兵して、斉を一緒に攻めようという意思を秦に示すことでしょう。
 秦にとっては趙を伴って斉を攻めるのと、斉と趙両方を討つのとでは大した違いはありません。そうなると斉としてはどちらにせよ対処し難いこととなるでしょう。それゆえ祝弗の話を聞くのは天下の諸侯を利するもの(であっても斉を利することはないもの)だと言えます」


 ・この人は周最(しゅうしゅ)の肩を持ってますから、周最に得があるような内容なのでしょう。なんですけど、結果的には「祝弗の意見を聞くな」と言っているわけで、間接的には助けているかもしれませんが、直接周最を推すようなことは言っていません。弁護するにしてはちょっと弱いような印象があります。
 そしてこの人の意見は通らず、呂禮は宰相になります。しかし趙は秦に特に何かしたという話は聞きません。


 ここらへんを考えてみると、武霊王という王が趙の王をしていて最盛期だったんですが、ちょうどこの頃裏切りで殺害されたかされるかあたりの時期ですね。なので、趙は秦とか斉とかそれどころではないと。内乱で王が死んで、王の死後どうするかということで大もめしていたわけです。なので、せっかく「胡服騎射(こふくきしゃ)」などを取り入れて一躍軍事的にトップに躍り出たかと思いきや、「お、趙のあれいいね」ということで各国がそれをパクることになったと。趙の軍事的優位は一時的なもので終わったということです。
 まあそこまで趙を意識したものというよりは、「例えば趙などは」「趙などを引き合いに出して見れば」的な感じで捉えた方が正確かもしれません。


 ・結局いろいろな人の思惑もむなしく、呂禮は宰相となりますが、これによっていろいろな人が困ることになったと。斉では孟嘗君が困ってましたが、秦では魏冄(ぎぜん)が困っていました。この魏冄という人はそもそも呂禮を秦から出ざるを得なくなった、そのきっかけを作った人のようです。
 孟嘗君はこの魏冄に手紙を送り、呂禮が宰相やってると斉ではオレが困ったけど、秦ではあんたが困ることになるよと。それを聞いた魏冄が呂禮を追い出すために斉を攻めて、そして呂禮は出ていくと。最終的にはこの呂禮は秦に戻ったようです。


 何が困るかって、秦と斉とが仲良くなれば孟嘗君や魏冄のように使われなくなる人が出てくるということです。つまり「蜚鳥尽きて良弓蔵せられ、狡兎死して走狗煮らる(ひちょうつきてりょうきゅうぞうせられ、こうとししてそうくにらる)」ということですね。腕自慢、力自慢の人も活躍の場があったわけですが、平和になってしまうと活躍の場がなくなると。そうなればお払い箱です。なので、そもそも乱世が続いてくれて世の中が平和にならない方が見せ場がある。そういうわけで趙をけしかけて戦争を引き起こそうというような勢力があったりするわけです。
 そういう意味でのこの話の本質というのは、戦争屋にとっては戦争がないとおまんま食い上げなので、戦争しようぜと。そういう和平を求める勢力と戦争を求める勢力とのせめぎ合い、そういうものが読み解けるのではないでしょうか。なので、この話からは周最、孟嘗君、魏冄といった戦争がないと輝けない人にとっては、戦争がなくなると困る、そういう事情が見えてくるように思います。







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