新戦国策1-18、秦の将である呂禮(りょれい)がある意図を持った勢力によって斉の宰相となるという話 改






 ということで前回は昭翦(しょうせん)という楚の人があんた西周から暗殺されますよ→東周からも狙われるかもと気付いて、こりゃ仲良くしとこうと東周と仲良くすることを決意するという話でした。仲が良ければ狙われることはなくなる。いてもらわないと困る存在となる。それが重要という話でした。


 ある人が周最(しゅうしゅ)のために秦の将である呂禮(りょれい、禮は礼の旧字体)に言った。
 「貴公はどうして秦に斉を攻めさせないのですか。この臣は、斉にそなたが相となるように取り計らいましょう。貴公が斉の相をしつつ秦に仕えれば身は安泰でしょう。
 そこであなたは周最を魏にいさせてこの計画を共になされば、天下は貴公によって安んじられることとなると言っても過言ではありますまい。東は斉によってあなたは重んじられ、西は秦によってまたあなたは重んじられることとなります。秦と斉が合わされば、あなたは常に尊重されることとなりましょう」


 ・原文だとこれ「周最(しゅうしゅ)が呂禮(りょれい)に言った」となってますが、そう思って読んでいるとこの文章かなり違和感がありますし、そもそも今までの流れと大分違うなと思います。今までは「ある人が周最のために言った」という形が多かったので、これもそうだろうなと思ってみるのがまあ妥当かなと思いますし、そもそも直接周最が誰かに献策するという形がちょっとレアすぎるだろうと思います。なので、注にはあるんですが「ある人が」という一文が原文に抜けていると思って読んでみるとすんなり読めましたので、それでいこうと思います。


 ・といってもこれそこまで深く読む必要のない文章だといえるでしょう。
 そもそもこういううまい話を勧めてきて、それにすんなり乗る(だろう)ということからしてこの呂禮という人はそこまですごい人ではないと見て間違いないと思います。また、そういう話に乗りやすいから話がきているのであり、そこを見透かされているだろうと思われる以上まあその程度だとみなされている。今でいうなんとか詐欺の原型みたいな話ですね。


 ・しかしこの呂禮という人ですが、斉にも「呂礼」という人がおり、しかも孟嘗君の政敵ですね。
 これもしかすると原文と注が両方間違っていて、斉の呂礼がある人に秦に斉を攻めさせては? つまり反秦の者たちをそれによって一掃させては? と言わせている話である可能性があります。
 また、別の可能性ですがその呂礼という人は斉から秦に移っているようです。なので、そこで秦将となった後に、もともと斉の出身なわけですから、その旧勢力を利用して……という可能性もあるといえるでしょう。まあ可能性をあげまくってもキリがないので、ちょっと整理してみますと。

 こちらのサイトを頼りにすれば、「呂礼」は秦から斉へと移ることとなり、孟嘗君と仲が悪くケンカし、その後斉からも出ていくと。その後のことはわかりません。恐らくこれが正しく、そしてこの話はその「呂礼」がまだ秦将だった時の話をしていると考えてほぼ間違いないのではと思います。そして、事態はこの「ある人」の言ったとおりに進みます。秦から出た「呂礼」は斉の宰相となります。そして秦の魏冄(ぎぜん)をそそのかし、斉を攻めさせることになり、呂礼は失脚し亡命することになると。


 恐らくこの流れを見ると、ある人というのは孟嘗君の息がかかった者だったのではないかと思います。それで権力はあるがちょっと利益に釣られやすい呂礼を失脚させるためにこういう工作をし、釣られた呂礼が斉に移った後に秦に斉を攻めさせて「呂礼のせいだ」ともっていくことで失脚させることに成功したと。これはそういう話ではないかと思います。


 ・つまりまとめるとこの話のいわんとするところは、うまい話にそそのかされて釣られた呂礼がうまい話、さらにうまい話と乗っていった末に何もかも失ったと。地位も信用も権力もすべて失って命だけ辛くも助かって亡命せざるを得ない状況に追い込まれた。エビで鯛を慣らし、イカで鯛を慣らす。そうして気づけば鯛は釣られてしまい、最終的には何も残らなかったと。そういう話だと思って間違いないように思います。小利に目がくらんでいった末に、最終的には何も残らなかった、というのがミソなのかなと思います。


 追記です。
 ・これ次回の話をみると、この呂禮が秦と斉との間で接着剤となっているのが厄介だから戦争を引き起こそうと画策している話になります。それによって秦と斉との間で戦争となり、接着剤となっていた呂禮は失脚すると。それによって孟嘗君の地位は上がるという話ですね。
 それを思えば、この話を進めた人というのは孟嘗君側ではないなと。それどころか孟嘗君の地位を低く抑えたいという願望があり、またはそういう意図を持った勢力ということになります。あるいは、それは斉と秦との間で和平を持ちたい、それどころか盟約して秦と仲良くやっていきたいという思いかもしれません。特に意図はないかもしれない。それはわかりませんが、問題はその勢力と孟嘗君との利害が対立しているということですね。
 ここが結構重要なところではないかと思います。








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