新戦国策1-16、馮雎(ふうしょ)が東周に逃げた昌他(しょうた)の信用を失墜させる話






 ということで前回は、秦と斉という二大大国があり、周はそのどちらについても自分の価値を高めることができるよと。人脈工作というか、国脈工作というか、そういう話でした。


 昌他(しょうた)が西周を逃げて東周へ行き、西周の情報をことごとく東周に告げた。東周はこれを大いに喜び、西周は大いに怒った。
 西周の雎(ふうしょ)が言った。
 「私がこれを殺して差し上げましょう。
 わが君は私に金を二十斤お与えください

 雎は人に金と書をやって、密かに昌他に送らせた。
 「昌他に告ぐ。
 事が成りそうであれば、努めて成すようにしろ。
 もしも成らなければ、速やかに逃げてこい。
 事に時間をかけていると、漏れて殺されることになる」

 そして人をやって東周の候に告げさせた。
 「今夜怪しいものが入ろうとするようです」
 候はその手紙を持ったものを捕まえて、東周に献じた。東周はたちどころに昌他を殺したのである。


 ・雎(ふうしょ)ですが、フリガナには「はうよし」とありましたが、さすがにおかしいのでそのまま「ふうしょ」としました。


 ・非常に手の込んだ策です。敵の所に入った厄介なやつを相手に直接殺させるというわけですが。
 一番の主眼は、そいつが実は間諜だったとみなさせることで「じゃああいつが話した話は全て信用できない」という状態に持っていくことではないでしょうか。敵のところに潜りこんだこと自体に意味をなくさせる。何を話して何を話してないかはわかりませんが、そのすべてを無意味化するということが重要かなと思います。殺すということは死人に口なしではありますが、でもそれ自体が別に目的というわけではないかなと。信用をなくせば、生きていようと死んでいようと関係ない。その上で、死んでもらえばさらにいいと。この話はそういう話ですね。
 無意味化する、意味のあるなしっていうのは信用がかかっているということがよくわかります。いくら情報があり、それが貴重な情報であっても信用が失墜し無意味化されていればもうどうしようもありません。


 ・三国時代に馬超という武将がいました。この武将は蜀漢の劉備に仕えて五虎将軍となったことが有名ですが、その前には韓遂(かんすい)という武将と組んで曹操を脅かしたこともあります。曹操はこの二人の間に離間の計を用いました。韓遂に、わざとぐしゃぐしゃと訂正した手紙を送り、それを韓遂が馬超に見せる。馬超の方では、普通手紙というものはきちんとしたものを送るはずがこうもぐしゃぐしゃと訂正してあるということは、韓遂が自分に見られては困るからと消したのではないかと韓遂を疑い始めます。こうして曹操を脅かした馬超と韓遂でしたが、最後には仲たがいし、潰し合って勢力自体が消えてなくなってしまいます。


 人と人との関係は非常に脆い。ちょっとしたことで疑い始めますし、信用など十年かかっても一瞬で崩れます。信用ということがいかに重要かということですし、それをいかに堅固なものとするかということですし、こうした故事を見るとなおそのことがよくわかります。作るならいかに堅固なものとするかですし、それがムリそうなら早々に諦めるというのも一つの手なのかもしれません。今回は関係や信用がそういうものだということ、そのくらい容易くないものだということを知ることができれば上々ではないでしょうか。


 ・金二十斤(きん)とありますが、一斤が大体600グラムくらいとありますので、大体12キロくらいでしょうか。斤という単位はいろいろ変動が激しいようで、450とかもありますが何しろ古代のことですから。三国時代の王双(おうそう)という武将は武器が60斤あったという話ですが、450グラムであれば27キロ、600グラムであれば36キロもあります。人間業ではないですね。

 当時の貨幣価値を現代で直接測れませんが、この下に銀もあり、銀も相当な価値を持っていたことを考えると1200万~1億2000万くらいで考えてもそう外れないかなと。
















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