新戦国策1-6、蘇厲(それい)が楚に行きたくない相国の手助けをする話






 ということで前回は蘇子(恐らく蘇秦)が西周の川下に水流さない政策によって困った東周を救い、さらには両国からお金をもらうと。そういう話でした。


 楚の昭獻(しょうけん、獻は献の旧字体)という臣が、とある用事で陽翟(ようてき)という場所にいた。周君は(楚は大国であり敬意を払う必要があったので)相国(しょうこく、今でいう大臣や首相)を行かせようとした。相国は行きたくないと思った。

 楚厲(それい)は相国のために周君に言った。
 「楚王が魏王と会う時には、わが君は両国に敬意を表するために陳封(ちんぽう)を楚に行かせて向公(しょうこう)を魏に行かせたものです。
 楚王と韓王が会う時にも、わが君は葉公(ようこう)を楚に行かせて向公を韓に行かせました。

 今、楚の昭獻は別に王というわけではありません。それなのにわが君は相国を行かせようとしておられます。もしも陽翟に王がいた場合には、一体誰を行かせるおつもりですか」
 周君はこれを聞いて「よし」と言い、相国を行かせることをやめたのである。


 ・これ最後のところですが、注を読んでいたらいわゆる反語的なニュアンスがあるように解釈するのが正しいのかなと思いました。
 「楚王が陽翟(ようてき)にいたら、誰を行かせるつもりですか」
 これに対して「いや、誰も行かせることはできない」というのではなく、「周君、あんた以外に行けるヤツなんかいないんだよ」という意味があると。
 王自ら出向く、しかも別に周と楚とは隣接していないので、当時のことですからとんでもない日数と手間暇かけて行くことになります。途中で山賊とか野盗の群れなどもいるでしょうし、魏や韓にしても余計な気をつかわせることになりかねない。周君のいない空白期間もできますし、危ない上に非常にめんどくさいと。そういう状態をわざわざ作って遠方にいくのは、決して得策ではない。そう言うことがあるように思います。


 ・これの背景というのは、周という国がとにかくものすごく弱いと。なので各国の王や要人に対してものすごく気を遣う必要があったということなのでしょう。かといってじゃあどのくらい気を遣うかといえば、それはもう限度がないわけですからとりあえずやっとけば間違いないと。とはいえそれが絶対にプラスになる確証もないわけですから、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」といえばいいですけど、まあ大部分は徒労ですよね。そうでなければこの相国みたいに「めんどくさい、行きたくない」などと言ったり思ったりはしないでしょう。
 そういうラッキーを期待して気を遣ってかつ労力をかけるということがいかに不毛でいかに悲しい努力なのか。それを思えば、この相国が行きたくないと思った時点でそれはけっこうな妥当性があるように思います。全くないのも問題ではあるでしょうが。


 ある意味ではこの周という国の特徴はこういうところから出ているとも言えます。
 弱小すぎるから挨拶はかかせないとか。表立っては活躍できないけど、権威を使って別な方角から工作をしつつ自分にとって有利にもっていこうとするとか。ある意味では賢いとも言えますが、よくよく見ていくと非常に賢しい(さかしい)とも言えます。間違いないのは、非常に頭がいい。普通ならそういう工作とかはかなり概念的なものであり、実物的なものではないので、ミスも多ければ頭でっかちになりがちなものですが、それをきっちり納めてくるあたり非常に頭がいいと言えるでしょう。


 ・余談ですが、楚っていうのは相国位が「令伊(れいいん)」だってのはしばしば書いてきました。つまり、殷(いん)王朝の正統な後継者を自認する国であり、そこに誇りを持つ国でもあると。そうなると、その殷を滅ぼしたのは周なのですがそういうわだかまりとか地味にあったりするんだろうかなとふと思いました。あまり聞いたことはないですが。







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