新戦国策2-9、李兌(りたい)が秦の侵攻から西周を守るのに一役買う話






 前回は樊餘(はんよ)という恐らくは西周の男が楚王に説いて、魏と韓の土地交換を止めさせる話でした。


 秦は、魏の将軍である犀武(さいぶ)の軍を伊闕(いけつ)で攻めて、そのまま兵を進めて周を攻めた。周の公子である周最(しゅうしゅ)のために趙の李兌(りたい)に言った。
 「秦が周を攻めるのを止めるのが最上の策だと考えます。趙にとっての上計は秦と魏とを再び戦わせる以上のことはないでしょうから。今秦が周を攻めてこれを得たならば、秦軍の多くは傷つくでしょう。秦が周に勝ったその利益を維持しようと思えば、必ずや魏を攻めないことでしょう。秦がもしも周を攻め落とせなければ、前には魏を破った労があったのに、その後には周を攻めて敗北するということになります。そうなればこれもまた魏を攻めないこととなるでしょう。
 今あなたが秦の周への侵攻を留めようとするなら、幸い秦はいまだに魏と講和をしておりません。全趙の力をもって止めようとするならば、それを聞かない者などいないでしょう。これによってあなたは、秦を退けて危機に瀕した周を安定させることができるのです。秦が周を去れば必ずや再度魏を攻め、魏はこれを支えることができないでしょうから、必ずや魏は趙にすがりついて講和をすることになるでしょう。すなわち趙は重きをなすことができるのです。
 もし魏が講和を考えなかったとして速やかに秦を支えるならば、これというのは周を立てて秦と魏とを戦わせることとなるのです。これもまた趙が重きをなすと言えるのです」


 ・これもまた主語がないですが、要するに西周にはたくさん口の立つ者がいて、それが西周のために働いているんだなという感じでいいのでしょう。無名であり、特に歴史に名前を残そうとか考えてはいなかったけれども、周のために働く人がいたと。給料があったのか恩義があったのか重く用いられたのかはわかりませんが、考えてみればすごいことだと思います。


 ・この人は要するに趙に仲立ちしてもらって、秦の西周への侵攻を食い止めたいという思いがあるわけですね。
 で、周を攻めたら秦は周を得たことに満足して魏を攻めたりしなくなると。そこで止まってしまうわけです。そうなれば魏と秦とが互いに攻め合ってすり減ってくれないので趙としては嬉しくないと。
 それよりは趙としては、秦と魏とが争ってすり減ってくれた方が得でしょうというわけですね。周みたいな雑魚に構って満足されるよりは、大国同士ですり減ってくれた方が良いと。あるいは、仮に二国が戦い合わなかったとしても、趙が間に入って講和を進めることができれば主導権があるのは趙です。そういう主導権を持てるのであれば、それが良くない? と言ってます。


 ・で、これ伊闕の戦い(いけつのたたかい)で魏は秦に大敗してますが。

 B.C.293年、25万の魏・韓の軍が壊滅して秦軍はほとんど被害がないと。これをやったのが白起(はくき)という名将です。
 白起

 この33年後のB.C.260に長平の戦いで、趙はこの白起によって散々に破られます。
 長平の戦い


 それを思えば、この話というのが紀元前293年ごろの話なのでしょう。趙もまだ余力があり、魏はもう青息吐息であって、このままだとヤバいなと。恐らく秦の白起の前に滅亡すら考えていたことが考えられます。まあ実際に魏が滅ぶのはB.C.225年のようですが。魏はこれですが、まだ趙は健康で輝きを持っていた頃だなって感じがします。


 ・ところで李兌(りたい)という男が出ていますが。
 この男は主君である武霊王(ぶれいおう)を追い込んで餓死させた男です。武霊王と言えば趙に胡服騎射(こふくきしゃ)を取り入れることで、趙を軍事大国とした王です。英雄という印象もある反面で、胡服という異民族の服を自国民に着せた、恥をかかせたということで反発も根強くありました。恨みに思っていたその勢力によって王がやられたという面があります。趙がそのごたごたをしている間に他国もこの胡服騎射を取り入れたので、趙の軍事的優位性は一過性のもので終わることとなります。


 その李兌がここで出ているということは「ああ、あの主君殺しのあいつか」っていう印象と無縁ではないなと思います。恐らく主導権を取りたい、権力を握りたいということでいかにも李兌が乗りそうな話ということでしょうか。まあわかりませんけど、何か含みがあるように思います。


 恐らく、これだけ書けば後は書くまでもないということなのでしょう。
 李兌はその通りに動き、西周は秦によって侵攻されることがなかった。侵攻を免れた。そういう感じで話が推移すると考えていいと思います。


 ついでに、李兌に関しては過去にこんな話もありますので合わせて紹介とします。
 戦国策92、蘇秦が李兌に説く累卵の話



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