新戦国策2-5、蘇代が韓に行き周に城をあげさせることで楚の兵を引かせる話






 楚が韓の邑(ゆう、村のこと)である氏(ようし)を狙っていた時に、韓では兵と糧食とを周で徴発しようとした(これに応じれば周は楚に怒られ、断れば韓に怒られる)。周君はこれを懸念して蘇代(そだい)に告げた。蘇代の方では、
 「何を憂えることがありましょうか。この蘇代、わが君のために韓に兵と糧食とを徴発させて、さらにはまた韓の高都を得て差し上げましょう」と言った。周君は大いに喜んで、
 「もしもその大任をこなしてくれるのであれば、私が国政はそなたに一任することにしよう」と言った。


 蘇代は行き、韓の相国である公中にまみえて言った。
 「公は楚の考えを知っておいでか。楚の将軍昭應(しょうおう)が楚王に言ったのは
 『韓は戦争によって疲弊し、食糧は乏しく、城を守る者すらおりません。そこで私がこれを攻めるのに食糧攻めをもってすれば、一月かからずこれを落とすことができましょう』ということです。
 今楚は韓の氏を囲むこと五か月になりますが、いまだに落とすことができません。これによって楚は疲弊し、楚王を始めとして誰もが昭應の説を信じなくなっております。
 この状況でもしも今、兵と食糧とを周に求めれば、楚に韓が疲弊していることを知らせる結果となります。昭應がもしこれを聞けば、必ずや楚王に勧めて兵を増やし氏に行かせ、そうなると氏は必ず落ちることとなりましょう」

 公中はこれに答えて、
 「確かにその通りだ。しかし我が使者は既に周に行ってしまった」
 蘇代は答えて、
 「そうであれば、周に高都を与えてはいかがでしょう」
 公中はこれに怒って、
 「周に兵と糧食とを徴発することがなくてもすでにいっぱいであるというのに、どうして高都まで与えることができようか」
 蘇代はこれに答えて、
 「周に高都を与えることになれば、周は必ず韓に屈することとなりましょう。秦がこれを聞いたならば、大いに怒って周と絶交することになりましょう。これによって公は高都を与えることで周を丸々手に入れることができるのです」
 公中は「よし、そうしよう」と言った。
 こうして韓は周で兵と糧食とを徴発することもなく、高都すら与えた。
 これによって楚は氏を落とすことなく去ることに決めたのである。


 ・これ難しい話ですね。
 前提として、秦は強国で、隣の韓と魏を常に脅かしています。
 韓も魏もそのため秦に従っていますが、内心は秦に対する反感を強く持っています。
 前回の話でもありましたが、周はさらに小国であり秦にとってはお話にならない程度の認識であり、周からすると超強大国がやってきたのだから文句も言えないし丁重に扱うしかないという感じでしょう。


 ・話通りに見れば、蘇代はそもそも周を助けるためにやってきているわけですし、兵士出せとか食糧寄こせという韓のムリな要求をはねのけたいわけです。そしてそれは達成されたどころか、さらに都市までもらっていると。


 楚からみると、韓が「なんか周で徴発しているようですよ」ということになれば弱り切っているなと見るのは間違いない。それが弱りきっているどころか周に都市まで割譲するほどの余裕があろうとはと。それに恐れをなしてか、はたまた不気味なものを感じてか楚は撤退することを決めます。という風に読めるわけですし、蘇代のそこまでの見通しの凄さを物語るものだといえるでしょうが。
 でも楚からすれば、少しでも弱っていただろう韓がさらに周という弱小国に都市まで割譲するっていうのはそこまで弱っているのか? というぐらいにも見えると思いますし、敵対している国が少なくとも都市の割譲によって弱体化したわけですからこれはチャンスとなりそうなものです。流れ的には違和感を挟むことなくそう読むべきかもしれませんが、どうもそれに違和感がある。


 ・これはではどういう風に読むべきか。
 前回の話で、周が秦に対して恭順の意を示したということがありましたが、それでうちよりも丁重に扱うのかいと楚はヘソを曲げたという話がありました。周には王朝をやっていた後光みたいなものがありますから。腐っても鯛だと。
 その周に韓が都市まであげたとなると、韓と周との結びつきはより強固なものになる。そうなると、もらった側の周としてはお礼に韓に出向かないわけにはいかない。そこまでやってもらうとなると、秦の扱い以上に丁重なものとなることになります。これに秦が怒って、うちよりも韓を上に扱うのかと。もう周とは絶交だと怒る。これは蘇代の読みにも繋がります。
 韓としては周との結びつきが強くなって、実質的に同盟国をもったも同然です(同盟国とは少しニュアンスが違うと思いますが、それ以上にいい言葉を思いつきません。信長が家康を同盟国に置いている感じが近いか、はたまた信長が室町幕府の権威を利用している感じが近いか)。こうなると、周と秦が仲良さげにしていただけでイラっとしていた楚なのに、韓と周とが仲良くなって気持ちが穏やかなはずがありません。むしろ、周と仲の良い韓を相手にして今現在戦いをしているということが印象としては最悪です。そこでやきもち(?)焼くような楚、いい格好したいはずの楚が周と仲のいい韓を攻めているとなれば、周もそこに加わる可能性だって出てきます。
 つまりこれは、楚はこれによって周を敵に回す危険性が出てくる以上は、もう実質的に戦うことができない、ということまで見越しての蘇代の一手だったのではないかなと。そういう話だと見るのがいいのかなと思います。








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