新戦国策1、安王






 厳遂(げんすい)は道に逆らう行為を行い、韓の宰相を刺し殺し、陽堅(ようけん)はそれに加担したが、逃れてその道中周へとやってきた。周君は陽堅を留める事十四日にもなり、これを厚遇した。
 韓の方では人を遣わしてこのことについて周を責めさせた。周君は、韓が大国なのでこれを憂慮した。とある客が周君に向って言うには、
 「かの者にきっぱりと言いなさい、『私は厳遂が逆賊行為を行って陽堅がこれに加担したことを知っておりました。それゆえに彼を留めた十四日間は、大国である貴国からの命を待っておりました。この小国では賊を入れるほどの大きさもありませんが、かといって貴国からの使いも至りませんでした。こういう事情でこうなりました』と。」


 ・戦国策ってこういう笑点じゃないですけど「お、うまいこと言ったな!」というようなことを好む感じがありますね。久々に思い出しました。
 韓にとっては自分のところの宰相である韓隗(かんかい)を殺されたのですが、それをやった男は聶政(じょうせい)という人ですね。この人は刺客列伝にも載るほどの有名な人物ですね。
 聶政についてはこちら

 リンク先では韓の宰相の名前が違っていますが、まあ細かいことはいいのかなと。名前を間違われるほどですから、どちらにせよ大したことはしていないのでしょう。こういう有名な話の裏話を語る感じも戦国策の好みそうな話です。


 ・まあ要するにこう言って韓からの使いに巧みに答えて、事なきを得たのだということですね。こういう食客からの助言で問題をクリアしていく様は、のび太君が次々に問題に巻き込まれて困ってドラえもんを呼び出すのによく似ているなと思います。こういう話の原型が戦国策なのかもしれません。


 ・ある者にとっての敵を迎え入れることは、自分がその相手と敵同士になる事を受け入れるということでもあるといえます。周君はそういう事情にどうも疎いようで、十四日間普通に接してきて韓から言われて初めて困った、というのは違和感を覚えるほどでもありますが(笑)戦国時代なのに、しかも周のトップのはずなのに、どうも危機感があまりないようです。
 それでもこの問題をクリアしている。つまり、周君が優秀であるかないかというのは大した問題ではなく、食客を大量に入れてその場その場で最善の対策を誰かが助言して、その最善の手を打てさえすればいいのだというような価値観があるように思います。現在であれば、みんな努力して刻苦勉励して、優秀になって……となるのが妥当ですが、でもそれってこの食客を目指すような生き方ですね。人脈さえあれば勉強はいらないというような生き方はあまり好きではありませんが、でも古くからあるそういう価値観に沿っているのはその人脈という価値観なのかもしれませんし、その価値観を今風の言葉で表せば「人脈」という言葉になってしまうのかもなあと思いました。





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