修理の秘訣






 ふと思い出した話。
 以前船乗りでとある修理の仕事をしていたもんだったんだけど、その一番最初の船のパートの長に当たる人がまるで海賊みたいに豪気な人で、いつもガハハと笑い飛ばしてるような人だった。すげえなと思える人で、今でもこうなりたいと思う人でもある。


 その人はよくいろんな経験談をしてくれたもんだったんだけど、その過去に一緒に修理をした人の話。
 マストにある通信を司る物だったかが壊れた時に、じゃあどうしようどうやって直そうとしていた時に、その人は一言、
 「これ、直す必要ありますかね?」
 と言ったんだと。
 で、一同「へ?」となり少しだけ考えてみると、確かに別にいらんと。直さなくていいと判明して、


 「じゃ、まあ、直さなくていっか……♬」
 みたいに話がまとまり、その結果直さなかったと。で入港して改めていろいろ手続きしたそうなんだけど、その人曰く「あれにはたまげた」と。
 修理屋なんだから直して当たり前、直して当然みたいな中で直す必要がないということを発見した、あいつはすごいヤツだった、おもしろいヤツだった、おもしろい出来事だった、という話をガハハと笑いながら話してもらったものだった。


 ふと、あれは今思い出しても含蓄に富んでいるなと思えたものだった。
 我々はつい例えば壊れたら修理、修理屋は直してナンボだとつい思いたがるものだけど、本当にそうなのかということは一考の余地がある。直してよくなる場合、それは恐らく99%以上そうだと言ってもいいと思うんだけど、その中にレアなケースとして直さない方がいい場合、または直してはならない場合というのもあるのではないかと。
 そういう場合を見抜いて直さない決断をできるかどうなのか。それは別に手抜きとかそういうことではなく、実際に少ない中でも確かに直さない方がいい場合というのはある。そしてそういう場合をそれと知って直さないという決断をするということ、それは直すということにそのまま向き合うよりも遥かに難しいことなのだ。つまり、修理するしないということは局地戦でしかない。もっと大局的な視野で物事を見なくてはいけないし、そうしていった先で直さないこともあり得る、それを知っているだけで幅は広がるのだ。


 ・なんかそんなふとされた世間話を思い出した。もう10年近く前になるが、ああしてしてもらった話、経験談というのは意外と身になっているものだとつくづく感じた。
 まあ、直せる能力があって直さないということと、直せないということとは全然違うってのも確かなんだけどね……(笑)





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