菜根譚71、四公六民(秦代の税制について)






 「飢えれば付いてきて飽きたら侮り、懐が暖かくなればそのために走り回り(懐が温かい=お金がある)、寒くなると見捨てる。
 これは人情というものの病ということができよう」


 ・人の心とはこのようなものだということですが、まるでアリのようですね。美味しいものが道端にあればやってきてなくなれば去って行く。美味しいものを持っているヤツがいればそのために働き、それがなくなれば見捨てると。きわめて無機的な、心の自由だとかなんだとかの前にある一定のルールの方に従っているということがよくわかる。給料がなくなれば働けませんしなくても働くといえば義侠心とか出てくるかもしれませんが、でもその義侠心だって果たしてどこまで持つかはわからない。腹が減ってはルールもくそもない。つまりそのルールの強さに比べて人の心は遥かに脆く弱いものなんですね。その義侠心とかを出さないで済むというのがどれだけ楽で人にとって心地よいかということでもありますし、逆に出させるような場面になったらその時点で負けでもある。


 ・秦の法治主義というのは商鞅(しょうおう)によってその方向性が決定されましたが、これはB.C.400くらいから始まり200年くらい続いていたことになります。そしてB.C.200年ごろに秦は滅亡し、楚漢が興亡を競う話になります。
 この法治主義というのは大変厳しいもので、特に有名なものは連座制があります。1人が逃亡したり犯罪を犯したりすれば5人を裁くと。こういう厳しいルールがあったので秦は統治は非常によく治まっており、軍事に関しても非常に強いものでした。そしてその強さが原動力となり、他の六国を滅ぼして中華統一を果たすことができましたし、それを自分でも認めていたので「始皇帝」などという尊称を持ち出してくることになったのでしょう。


 ・ところがこのルールというのはあまりにも有効でありながらもすさまじく厳しいものだったと。今でも「四公六民」とかいいますが、要するに儲けが100%あるとすれば四割は税金として払えとなるんですが、それくらいがまあ妥当でしょうというのがあったわけです。ところがこの秦という国はそれどころではなかったと思いますが、パッと資料が出てきません。7割とかじゃなかったかなと。
 そのくらい高い上に、働き手は公共事業ということで戦争ではないですが、公共事業に従事しなければならないというルールがありました。例えば万里の長城ですし、万里の道(公道)だったかという直接長城へとへ行ける巨大な直通道路も建造してました。つまり賦役(ぶえき)というヤツでしょうね。それによって給料が出たとか出なかったとか聞いたことがあまりないように思いますが、多分出なかったかあるいは出ても微々たるものだったか。こうして全然その家の働き手が家にいないのに税金は払えと。それはルールだから仕方ない、で払えなければ打ち首だし働けなければ打ち首、しかも連座制で五人まとめて斬首みたいな非常に厳しいものでした。


 あまりにも厳しい上にイヤなら打ち首、ということで打ち首が決定しそうなみんなが一致団結して秦を倒せとやったことにより、秦は統一してから15年後にはまさかの滅亡という事態に陥っています。秦にとってその最大の強みであった法治主義と連座制がまさか最後に大きく足を引っ張るとはという感じですね。


 ・人の心よりルールだよ、というのもわかりますがそうして滅んだのは秦という偉大な先例があります。そして漢というのはそのことがよくわかっていて、ルールよりも人の心だということを打ち出した国でもありました。秦によるあまりにも膨大過ぎる法の山、イヤなら打ち首というルール至上主義に比べれば漢は人に優しい国造りを目指した。法は優しく、永遠に無税とすると決めたりした例もありました。


 ルールから離れてもその先にあるのは今度は人のルール、どこまでいってもルールなのかもしれません。
 しかしそれは「飢えれば付いてきて飽きても付いてくる、懐が暖かくなればそのために走り回り、寒くなっても走り回るしかない」という秦的な、外的に強制してくる状態よりはいいというように枠組みをさらに外に作ることもできるのではないかな、というように思います。



 ・余談ですが、「四公六民」でも現代に基準を合わせてみると結構高いなということに気づかされます。30万なら12万は税金で飛んでいきますし、20万でも8万は飛んでいきますから。100万のうち40万は税金で消えていくってのがいかに高いか。
 それがなんか「九公一民」ばりの政策が次々と出ていて餓死者も出ているというのは、秦でも滅んだというのにこの国は本当に大丈夫だろうか、などと最後に少し思ってみた次第です。







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