菜根譚66、衰えていくということ(呂布の末路について)






 「美あれば醜が必ずあって、これが対を為している。私が美を誇ったりしなければ、誰が私を醜だとするものだろうか。
 清潔ということがあれば、汚濁ということが対を為している。私が清潔を好んだりしなければ、誰も私を敢えて汚濁としたりはしないであろう」


 ・ホンマかいなという内容ですが、言わんとするところはなんとなくわかります。
 強さを誇れば弱さを暴きたくなる。
 オレは天才だと言えば、これこれの内容を説明しろと迫りたくなる。
 美を誇れば醜を暴きたくなる。それが人の性だということです。
 最強だというのであれば証明してみたくなる。戦わせたりして証明させようとして、そして最終的には銃には勝てないよと言いたくなるものです。そういう人の性向を言い表そうとしているものだと言えるでしょう。


 ・三国志の時代には呂布を筆頭にたくさんの武将がいました。ところが大体の武将は自分が最強だと思って自信を持っていますから、その自分が最強であるということのその証明のために一騎打ちなどをして有名な武将と手合わせをし、そして死んでいっています。例えばこの呂布に挑んだりなどして大勢死んでいるわけですね。
 呂布が最強であるということは、その呂布に挑んだ者のほとんどは死んだと。「一将功成りて万骨枯る」の典型のような話ですが、、ともかくそういう背景があるがために呂布が最強となっていると言えそうです。どこへ行っても一騎打ちをしており、その相手は大体皆死んでいます。劉備、関羽、張飛は三人でこの呂布に挑んでますが、それでも互角の戦いをしてようやく呂布を撃退しているわけですから呂布は頭一つ分抜きんでていると言えるでしょう。ついでにこの三人は呂布と戦って生き残ったレアケースだと言えそうです。


 ・そういう背景があるわけですから、呂布は自分の武勇に絶対の自信を持っています。丁原を殺害し、董卓につきますがその董卓も殺害します。こうして裏切りを繰り返しますが、自分ほどの武勇の持ち主は他にいないと思っていますから、自信満々です。そして事実その通りで、他の群雄も呂布の武勇を認めているために殺すことを惜しむという事情もあります。


 その呂布も最後には部下と仲たがいし、部下の裏切りによって捕らえられることになります。いくら武勇に秀でていても、中華第一の武術があろうとも、酒に酔って寝込みを襲われては勝てません。縛り上げられて曹操の前に引っ立てられることになります。これが呂布の第一の敗北です。まあそれをもたらしたのは曹操側の計略によるものでもありますから、実際には離間の計という計略に負けたといえなくもないですが。
計略と、酒と寝込みを襲われては勝てないというわけですね。


 曹操も自分の前に引き出された呂布を前にして考え込みます。人材コレクターである曹操にとって、これだけ誰からも分かる優れた才能を持つ呂布を斬るというのは惜しい。
 「わしを使ってみんか」
 呂布の言葉に曹操は悩みます。
 ここで隣にいた劉備が言います。
 「丁原と董卓のことを忘れなさるな」と。これを聞いて呂布は激高し、そして曹操もその通りだと思いを改めます。
 いくら優れた武勇をもっていようと、それが裏切って襲ってきた場合はなすすべがない。いくら優れたナイフでも自分に突き刺さればその痛手はいかんともし難い。
 そして呂布にはその信用がない。これが呂布の第二の敗北だと言えます。これは呂布自らが失ってきたことによるところが大きいと言えるでしょう。


 そしてもうひとつ曹操が考えていたことがあります。呂布の配下には張遼(ちょうりょう)という騎馬の扱いに長けた将軍がいることはわかっていました。個人の武勇としては呂布には劣るかもしれないが、自ら馬に乗り騎馬部隊の統率をさせる意味ではもしかしたら張遼の方が上かもしれません。


 「まあ、張遼がいるからいいか」
 これが最終的な決定打となり、呂布は斬られることとなります。
 呂布の個人的な武勇と、張遼の組織的な部隊の統率能力ですね。この二つを比較してみると張遼の方が使いやすいかもしれない。そもそもそうして呂布の比類ない武勇はこの時点ではこうして張遼の統率能力と比べることができた。比べて話せるだけのものとなってしまった。見方によってはそういうこともできる、その見方をこの時の曹操が持っていた。……まあそれだけ呂布の信用が落ちていなければそもそもそうはならなかったともいえるでしょう。呂布はそこに来るまでにあまりにも裏切りすぎていた。呂布はすごいがあまりにも裏切りが過ぎる。ならなんとかその代わりは見つけられないか……
 こうしたことによって、呂布が大きくその持ち点を減らしていた、それが最終的に決定打となったのは間違いないことです。


 なにはともあれ、呂布は用済みとなった。最強決定戦で呂布はその武勇以外の物と比較され、そして負け、斬首されることとなったわけです。最強を目指して勝ち続けた呂布が、その先で武勇以外のものと比較され、そして負けたこと。最強というものが辿る末路について考えた時に、この行く末というのは示唆的であると言えるでしょう。
 どうやっても、どう転んでも負ける。時間が経てばいずれは衰えて負けるだろうし、その他の様々な問題によってどうしても衰えていくと。どうしても順位を下げていかないわけにはいかなくなる。最強もアラを見出されるだろうし、清潔も一点でもそのアラを衝かれるようなことになる。
 すべての物はこういう道を辿る運命にある、というのを呂布の生き方というのははっきりと示していると言えそうです。







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