往人と晴子が外で観鈴の話をしている。
そしてそのまま往人は出ていくことを決める。
距離が近いから発作が起きる。じゃあ遠ざかればいいと往人は言う。
「我慢しなくちゃね。これからも毎日会えるんだもんね」
涙を我慢する観鈴。
そこで痛みが。
「どうしたのかな……この頃背中の方が時々痛くて……うっ……」
・つまりこの時点では観鈴には発作と痛みとがあると。
発作は人との距離が近くなった時に起こる、だとすれば痛みは距離が遠くなった時に起こる。
・寿司を払いのける往人。
説教をして思い切り正論をぶちまける往人。
後で思いっきりへこんでいる晴子。
「……キッツいこと言いおってからに。
言われんでもとっくの昔にわかってるっちゅうねん。
いつまでこんな暮らししてなあかんのやろ。
誕生日にプレゼントもあげんで、いつあの子がおらんようになるかわからんことにおびえて……
決めた!
あの子をうちの子ぉにする!
立花の家に乗り込んで、談判してきたる!」
往人に言うのはいつもの調子。
「そうやーぶらり一人旅。
温泉巡りや」
往人はこのセリフを聞いて激怒する。
「なに考えてんだよあんた!
あいつは、観鈴はどうすんだよ!」
その言葉を無視して晴子は出ていく。
でも晴子の態度とは裏腹に、固い決意がある。
「観鈴、行ってくんで」
その後往人は原因不明の何かに背後から切り付けられて倒れ込む。
そして出ていくことにする。
「これ以上い続けたら二人とも助からない。だから俺はお前から逃げることにした」
部屋から出ていった往人。
「行っちゃった……
あたし一人になる。
本当に一人になっちゃう。
一人になったらもうがんばれないよ」
ここで往人と旅に出ればいいんだと思いつくが、あっさり却下される。
「俺はこの家から出ていきたいわけじゃない。
お前から離れなくちゃいけないんだ」
そして出ていく往人。
「一人きりになっちゃった……
お母さん……往人さん……
痛い、痛いよ……」
「今日までずっと一人、明日からも……
結局私ががんばっても人に迷惑かけるだけで、いいことなんてひとつもないのに……
今までの私がずっとそうだったみたいに、諦めていたら良かったんだ……
誰も好きにならずに……」
暴れまわる観鈴。
「寝よう……もう起きなくてもいいんだ」
・歩けない、足に力が入らない観鈴が暴れまわって机を蹴とばす。
往人が出ていったために回復したのか。
7話でもよく見直してみると部屋が散らかっているので、観鈴が暴れまわったのは間違いない。
そして帰ってくる往人。
新しい人形劇をした末に消えていく。
「どこ行ったの往人さん?
戻ってきてくれたんだよね?」
ここでそらは思う。
「そうだ、思いだした。
俺はかつて人間だった。
国崎往人という人間だった……」
ここで流れるシーンていうのは非現実的だといえばそうなるわけだが。
・過去に一度この場面を経験した往人がそらとなっている
・そらのなかにある往人という人格が語っている
・そして観鈴を励ますことしかできない
・ゴールの存在を示唆して消えていく
とこういう風になる。
「もしできることなら、出会ったその日からやり直したい!」
と願った往人がカラスになって再度ここまでいろいろ経験してきた。主に晴子周辺についていろいろ見てきたわけだけど、じゃあ一回目と比べて何が変わったのかといえばそこまで大きく変わっているわけではない。
・とりあえず当てにならないと思っていた晴子が橘家に乗り込んで談判していること
・人としての往人はもういないわけだけど、その代わりにカラスのそらがそばにいること
・佳乃もみなぎも他人としての往人がクリアしたんだろうなということ
恐らく大きな違いと言えばそのくらいではないかなと。
晴子が何をしていてどう考えているか、それを見てきたことで「なんだ、薄情かと思ったら意外といろいろやってるし思ってんだな」ということに往人は気づいた。でもそれが別に直接何かの役に立っているわけではない。あくまで「晴子はいい加減でダメなやつだ」というような思い込みが解けた。意外と見えないところで考え込んでいるし、いろいろやっているんだなと。
この時点でもう期待できるし何かやってくれるとしたら晴子しかいない。そういう他力本願みたいなものに目覚めつつあるというのはあるのではないかと。
もともと「もう一度やり直したい!」と思った、それを願った往人っていうのは自力本願なところが非常に強かった。だから願いも自力本願めいたものになってしまう。どうしてもオレがやらなくては! オレが救うんだ! という熱血系なものになってしまう。でも生まれ変わった往人がじゃあ何かできるかといえば、カラスであって(笑)なにもできない。なにひとつできないし、観鈴と話すことすらできない。恐竜を動かすことは動かしていたけど、あれだって微力なもので。5歳くらいの子どもでも人形を拾い上げることはできたのに、それすらもできない。本当に無力な存在。
・考えてみればどっかのシミュレーションゲームで「やっつけ負け」というのがあったけど、そんな感じかなと(笑)
下手に強いだけに最前線で戦う。でもそうすると少しづつ傷を負っていって、10、20と戦っていくと死んでしまうという(笑)強くないと最前線に配置されないわけだから他のユニットよりも強いことは強いわけだけど、でもその下手な強さが裏目に出て死ぬパターンというのはあるかなと思います。
考えてみれば国崎往人ってのはすごい人だと思うんです。佳乃の問題もみなぎの問題もなんとなく解決してしまった。それというのは結局は例えば姉である聖の「思い」があったり、みなぎへの妹のみちるの「思い」があったわけで。それが詰まっているというか行き詰っている、それをちょっとねじって直してしまうというようなそういう系の強さだと思うんですけど。もともと直る力はあった、でも直すことができなかったそれを協力して直したというような。
だからA地点からB地点まで続くホースがあったとして、そのホースに亀裂が走ってて水が届かない。そこへ国崎往人という新しいホースが接続されて漏水率0%みたいになって問題が解決されるような。そういう直し方だと思うんですよね。でもそれでうまくいきすぎて、最後の大ボスである観鈴を助ける場面になったら「弱ったぞ、ホースが足りない」というような(笑)やっつけ負けしてたと思うんですよね。
・往人がカラスになるっていうことはつまり「お前はもう黙って見とけ」ということであって。それだと最後の大ボスに勝てんだろ! と(笑)でもそのカラスとして限られた力を使って、肝心なことは観鈴にアドバイスできていた。がんばろうということ、その先にゴールがあるということ、俺はずっとそばにいるということ。
そして何よりも、俺ががんばらなくても解決しようとがんばっている人がいるということを結果的には伝えることに成功していた。これが重要なんじゃないかなと。
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