菜根譚45、不動の心(逢紀、許攸、審配らと見る袁紹陣営)






 「風が竹に向かって吹く。風が過ぎ去れば竹は音を残さない。
 雁(かり)が寒い水辺を渡っていく。雁が過ぎ去れば影はそこに残らない。
 ゆえに君子は事に臨んで初めて心を動かし、事が去ってしまえば心を空虚にするのである」


 ・これ「君子にとって事前の準備は全く不要」とかそういうことを言いたい文章ではないんだろうなと(笑)
 むしろ逆で、そこを含んでの「事に臨む」なのだろうなと。
 そして心を動かし、あるいは空虚にするというのは心のありようであって、前々から過度な期待はしないし執着もしない。それによって前のめりにもならなければ、後ろ髪を引かれるような境地にもならないということを言おうとしているんじゃないかと思います。つまり過度に思い入れることがないし、全く欠乏しているということもない。
 こうして適度なありように収まるということ、その方向性がここで言われているんじゃないかと思います。


 ・たびたび袁紹陣営を引き合いに出してますが、今回も出そうと思います(笑)
 袁紹陣営けっこう面白いなと思いますので。考察するかいがありますね。
 当分は袁紹陣営をきちんと把握することを念頭に置いていこうと思っているのもありますし。


 ・ということで官渡の戦い前なんですが。
 官渡の戦い

 徐州を巡って争っている劉備と曹操ですが、田豊(でんぽう)はここで曹操の背後を衝かれてはと進言します。
 それはいい!ということで計画を練っていた袁紹陣営でしたが、なかなか出発しません。
 おかしいぞということで田豊が様子を聞きに行くと、「子どもが(具体的に誰だったかは忘れましたが)病気になって心配だから出兵は取りやめだ」
 と袁紹に言われます。
 なんてことだ! これほどの好機を逃すとは愚か者め! と田豊がこっそり言ったという話ですが、これを聞いた袁紹は田豊を邪険に扱うようになります。


 ・こうして官渡の戦いを迎えることになります。
 でも袁紹は田豊に対し感情のしこりがあるんですよね。あの時オレをバカにしやがったヤツだという思いがある。


 その中で会議をするんですけど、袁紹は田豊が嫌いなので意見を取りあげません。沮授(そじゅ)も田豊と同様にここは長期戦とすべきと主張しましたが、田豊と意見が一緒だからか袁紹はそれを嫌います。
 とりあえず「田豊は軍の士気を乱したので投獄」ということが決定され、田豊は牢屋に入れられます(笑)
 どんだけ嫌ってんだよって感じですね。
 袁紹が田豊を嫌っているということですが、それは言ってみれば火種に過ぎません。
 ここに油を注いだのが逢紀(ほうき)でした。
 逢紀
 反田豊ということで、郭図と共に田豊を貶める役をやっています。
 官渡の戦いから袁紹が負けて戻った時も、「これではあの田豊が笑いますな」と焚き付けて田豊を殺させたのはこの逢紀だったようです。


 さて。
 田豊と沮授は長期戦を主張したということでしたが、その意見の真逆をいったのが郭図(かくと)と審配(しんぱい)でした。
 二人はこの戦いは短期決戦にすべきだと主張します。

 審配

 非常に真面目で剛直な人だったようです。
 その一方、金に汚いことで有名だったのが許攸(きょゆう)でした。
 許攸

 なんかわかりませんけど、この金に汚い許攸の家族が罪を犯したとかで、非常にマジメな審配が許攸を告発します。
 それに怒った許攸が曹操軍に投降すると。そして烏巣(うそう)というところに食糧が貯蔵されているが防備が手薄なので落とすべきだと曹操に言います。
 曹操はこれを採用し烏巣を攻撃したため、袁紹軍の食料はなくなり長期戦が不可能になったということです。


 ・さて。
 ここまでで袁紹陣営は6人見たことになります。
 前回は田豊、沮授、郭図でしたが今回は逢紀、許攸、審配ですね。
 前回は菜根譚40で見てきました。

 しかしまあそれにしても大変に個性豊かな面々で、いかに袁紹陣営がドロドロしていたかが垣間見えるかのようですね(笑)


 ・逢紀と郭図に関しては反田豊であり、袁紹が嫌ってる田豊を叩けば地位が上がるというようなところがありますね。
 「田豊イヤなヤツですよねー」
 といえば袁紹は大満足でしょう(笑)
 「我が意を得たり!」
 と言わんばかりだなと。
 主君に嫌われてるヤツを一緒に叩くっていうのは、処世術として非常に優れていると言えると思います。
 「敵の敵は味方」とか言いますが、「主君の敵は敵」なんですよね。
 そうして一緒に叩いてポイントを稼ぐというのは、現代でも通用する処世術だと言えると思います。
 いわゆる「ポイ活」ってヤツの仲間ですね(笑)


 ・田豊は非常に才があり智謀に長けており、「かの張良・陳平にも匹敵する」と言われるほどだったようですが、でも袁紹陣営にいる田豊ってその才を発揮するどころではありません。才があるかないかとかもはやどうでもいいんですよね。
 袁紹に睨まれており、叩けば叩くだけ叩いたヤツの地位を上げてくれる非常に都合の良い存在となっている節があります。逢紀と郭図からすればこんなうまい話はないぞと。田豊の敵として立ちはだかったということのようですが、実際は袁紹に嫌われていることから見れば二人にとってみればボーナスステージみたいなもんですよね(笑)


 叩けば叩くほど地位が上がる、いわば打ち出の小づちみたいなもんですよ(笑)
 田豊の才能とかもう全然関係ないんですけどね(笑)
 許攸はさっさと曹操に寝返ってますが、田豊こそ機をみて状況を読んでさっさと袁紹陣営を脱出せねばならなかったと思います。牢屋の門番に賄賂でも渡して脱獄を考える必要があったと思います。


 ・ここで冒頭に戻りますけども。

「風が竹に向かって吹く。風が過ぎ去れば竹は音を残さない。
 雁(かり)が寒い水辺を渡っていく。雁が過ぎ去れば影はそこに残らない。
 ゆえに君子は事に臨んで初めて心を動かし、事が去ってしまえば心を空虚にするのである」

 とありますけども、袁紹陣営は官渡の戦い前に既に敗北していたと言えると思います。
 田豊がいきなり「士気を下げた」というよくわからん理由で牢屋に放り込まれたこともそうですが、そもそもそういう空気がある状況で戦いなどできるはずがない。
 田豊が牢屋に入れられたことは確かに危ういですが、そういう空気感があったことが既に敗北を意味するものであったといえないかと。


 ・郭図はこの後に張郃、高覧(ちょうこう、こうらん)と共に曹操の本陣急襲作戦をしますが、失敗します。
 「張郃らはこの失敗を喜んでいるらしい」と郭図は袁紹に告げ、袁紹は激怒し張郃らを殺そうとしますが、張郃らは自分たちがどうやら讒言を受けているらしいと聞いてこりゃやってらんねえと曹操陣営にさっさと投降します。

 こういう空気感ですよね(笑)
 脆弱な土地に種をまいたところで芽は出ないでしょうが、同様にいくら良将や知将がそろっていてもそういう空気感の下では芽を出すことはないと思います。
 袁紹陣営の異常に過度な前のめりな空気感ですよね。出る杭は徹底的に打つし、讒言を日ごろよくやってるヤツが天下を取っている、制空権を握っているというこの空気感を一早く察知して逃げることはどうしても必要でしょう。


 ・͡この後、張郃は曹操に従って各地を転戦しますがどこにいっても大活躍をします。
 劉備などは張郃を恐れており、張郃が来ると聞くとこりゃヤバいぞと思ったと。
 あまりにも活躍しすぎて目障りなので、後々の災いになりかねんと司馬懿に思われて、ハメられて殺されたという話もあります。


 しかしこの張郃も、郭図の讒言で袁紹に殺されていればその後30年に渡って活躍するようなこともなかったでしょう。
 「良鳥は棲みかを選ぶ」と言いますが、田豊が張郃のように曹操に裏切っていればまた違っていたと思いますし、そういう空気感の下で働いていた時点で田豊の命運は既に決まっていたともいえるのではないでしょうか。





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