戦場特派員/橋田信介




 ふと、懐かしい本を見つけた。  



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 橋田信介さんが書いた「戦場特派員」である。
 なんか高校二年生くらいの時の事を思い出した。
 夜中にふと目が覚めて、なんとなく気になってテレビを付けてみた。大体そういう時に凄まじいのがやってて人生が大きく影響されるもんだけど、まさにこの時がそうだった。
 「ドキュメントなんとか」という番組がやってて、当時やってたイラク戦争の、その爆弾を落とされる側からの映像というのが流れていた。レポーターである爺さんは(つまり橋田信介さん)、イラクのホテルから、今まさに爆弾が落とされている最中に撮影をしていた。爆弾の轟音や映像の揺れからは、それが本当に爆弾が降っている最中のイラクなんだということが良く伝わってきた。


 おいおい、なんて命知らずなじいさんなんだ、と思いながらも何となく背筋をまっすぐにせねばならないような気持ちを感じつつ、テレビに見入っていた。というより気付けばテレビにかじりつくようにして見ていた。あまりにもこの日本という平和な空間とは異質な感覚。剥き出しの、まさにリアルな世界といった感じ。
 情け遠慮一切ない世界で、こうも無慈悲に遠慮なく爆弾が落とされるもんかと。これこそがまさに「真実」なんだろうし、映像を見ていたオレはただ茫然と見ていたが、しかし「これだ!」という感覚を手にしていた。


 世界の最前線でなければ、真実など分からない。
 最前線に行かなければならない。
 よし、オレも最前線に行くんだ。
 絶対におもしろいはずだ。
 そうした思いをその時にはっきりと悟ったことをよく覚えている。


 大学に落ちて勉強している最中に聞こえてきたのは、この橋田信介さんが急死したという話だった。
 イラクに行って、武装勢力に襲われて死亡した……
 言葉にならなかった。ウソだろと思っていた。なんか自分の人生の前に置かれていた灯火が不意に消されたような。これから先オレはどうすればいいんだろうという感じだった。オレはそのわずか30分足らずのテレビを見て、人生が変わったような気がしていたが、実際は変わりかけたところで終わったという感じだった。


 「ヨー、元気?
 まあタバコでも一本やれや。ほれ」
 こう言ってタバコをやって、一緒に座ってタバコを吸えたら大体の交渉はうまくいく。そんなことを橋田さんは言っていた。「世界」というものを考えるにあたって、その橋田さんの考えていたような人間観であり世界観というのはかなり大きくオレに影響していた気がする。恐らく漠然と「世界」というものをそうしたフィルター、橋田フィルターのようなものを通して見ていたような気がする。けっこう朗らかだし、人間だし、まあとりあえずなんとかなると。


 そう思って眺めた「世界」であり「アフリカ」ってのは強烈に違っていたなあと思う。
 ナイフ商人が跋扈しており、気を抜けば刺されて路地裏に死体だけ放置されて財布は持って行かれかねない。
 一攫千金、金のためなら命は二の次であり、船舶をどうしても強奪してやるという命知らずな野心に満ち溢れた人たち。
 銃を突き付けられ、いい年こいたおっさんが無残に泣いて命乞いをする世界。


 そう、夢は打ち破られた。
 これが「世界」か……
 見開いた眼を瞬きもせず、全身から噴き出る汗の異様さを感じながら、為す術なく佇んでいたのを覚えている。
 無慈悲なまでにこの世界というのはホント血も涙もねえな。
 もうちょっとなんとかならねえのかい……


 たんぽぽどころか、砂漠しかない。
 代わりに泣いてくれるような湿っぽい空などなかった。
 そう、どこをどう切り取っても救いようがないのを感じたもんだった。


 ・そしてこうして日本にいる。
 あれから人生二倍くらい生きているけど、果たしてどこまで変わったんだろうか。
 結局分かったことは、正義感に満ち溢れ好奇心から突き進み、一生をアフリカのために捧げる……そんな生き方はオレにはムリだってことだった。
 でもまああれからいろいろあったけど、こうして手元にこの本があるってのもおもしろいなと。
 オススメの一冊です。
 良かったら読んでみてください。
 私の人生を変え(かけ)た本だと思います。


 とりあえずせっかくなんでまた読んでみるかー。




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