菜根譚13、批判と指導、指摘と理想(張飛が徐州を守る話)






 「人の悪を責めることについては、あまりにも厳しくすることは避けるべきである。
 追及されることを耐えるということについて考える必要がある。
 また、人に善を教える場合には、あまりにも高すぎることがないようにすべきである。
 それに従うことができない、というようなことがないようにする必要がある」


 ・解説では悪と善ではなく、欠点と善になってましたが、原文に従って悪と善としました。
 短所と理想、とかでもきちんと当てはまると思いますし、要するにあんまり他人の悪いところをつつきなさんな、あんまり他人にできもしない理想を語りなさんなと釘を刺そうとしている文章だと思っていいと思います。
 他人の欠点やアラというのは非常に目に付きやすいものです。そしてそこに対して指摘を始めたらもう終わりが見えないほどつつきたくなってしまうのが人情です。
 言わなくてもいいし、そもそも他人のことなら関係ないしと思っていられればそこをつつくことなどないかもしれませんが。無関心のままでいいならですね。でも社会で責任ある立場になればなるほど、こういうことと無縁で関わりなく生きていこうとはなかなかできなくなる。そうなると結局手始めに一番言いやすい指摘しやすいところをつつくことになってしまうと。まあいわゆる汚れ役でしょうかね(笑)


 でもこれが結構な落とし穴で、反感もたれたらおしまいだし言われた側は感情のしこりを持ったりするものです。
 そりゃ得意げにみんなの前でつついていれば、自らの仕事してる感は満たせるし、それっぽく演出できてあいつ仕事できるわーって目線もクリアできてオレすげえかもと思えて、一石三鳥で鼻高々ってなわけですが、でもこういう仕事は極力避けるべきだと。
 なぜそうなのかって言ったら、相手の居場所を完膚なきまでに叩き潰してしまうからでしょうね。
 社会の評価はそこをしっかり叩いてる人間に集まるものです。
 でもそれで例えば相手が辞めたとすれば、負担は残された人間に一気にのしかかってくるわけです。今の時代思考が近視眼的になりがちなので、そこまで思考が回ることはないですけど、叩いたヤツの責任と下手さはやっぱりかなりあるし、ずっとそんなんしてたら仕事が回らなくなる。あいつが辞めたのが悪いとか、メンタルがヘタレなのが悪いと言って気持ちだけでも満たされて仕事に向かえるとすればいいですけど、けっこうそれで従業員不足で黒字出してながらも潰れるところは多いなと思ってみてます。全員フル回転のヘトヘトになるってわけですね。
 だから味方を潰しちゃダメなんだなっていう経験知がもっと広まっていい気がするんですけど、実際のところは味方を潰してストレス発散、味方潰しどころか職場潰しになってる陥ってる例というのは相当多いと思います。


 ・同様に「善」と言ってますが、理想をすさまじく高くすることも避けるべきだと。
 これも多いですよね。
 「お前が一人で一瞬で三役できればクリアできるだろう」
 ってことを公然と言う場合も多いわけですよ。
 いやいや、それができるならあなたがまずそれやってくれって話ですけどね(笑)
 分身の術みたいなことを本気で言う場合もかなりありますね。
 で、この世は言ったもの勝ちで言った者が正義だから、
 「あいつが悪い」
 となると
 「そうだ!」
 みたいになりますけど。言ってる人が三人役やってみてくれとなると不可能だったりするわけです。こういう場合も潰れても仕方ないなと思いますね。思考が現実から離れていっちゃってるんですけどそれに気付けてない。


 ・そもそもが赤字だったりギリギリだったりすると人にあんまり期待しないんですけど、下手に黒字出してるところの方がキツイこと言いますし、期待値の最低ラインもかなり高いですよね。なんでこんなこともできないんだ! みたいな。へばって案外あっさり潰れるのはけっこうな黒字出してるところだというのは、注目していいような気がしますね。


 ・話は少し外れますが、私の友人が10歳くらいの時にスポ少(スポーツ少年団)入って野球をやってたんです。
 でもスポ少ってけっこう言葉もキツイし、当時は結構叩かれるってこともあったようなんですよね。そのくらいのしごきに耐えれなくてどうするというような。
 「なにやってんだおまえ!」とか
 「もっとしっかりしろやー!」
 みたいな環境がなかなかきつかったようなんですよね。で土曜日も練習あったんですけど、自転車ででかけたと思ったらそのまま戻ってきたと。そうするとお婆さんが言うわけです。
 「あれ、スポ少は?」
 「うん、ちょっと……」
 おばあさんはこれ以上特に何も言わなかった。でそのままスポ少辞めちゃったんだそうです。3日で辞めたってのが当時話題だったことを覚えてます。


 私この話が好きで年に30回くらいよく思い出すんですよね。
 すごい判断だなと。これはなかなかマネできないなと。
 わたしなんぞは「おまえまだ3日目だろうが!」とか
 「一か月は最低続けてみなさい」とか
 「男は意志が大切だ」
 とかそれっぽいこと言いそうだなと思うんです。
 で、もしも続けていたとしたらそれはそれでそれっぽく鍛えられたような気もするんです。でもこの場では居場所を第一に考えたわけです。スポ少でしごかれ。家でしごかれてたら、一体どこに居場所があるのかと。行き場をなくしますよね。息が抜ける場所がない。そうなったらしごかれて強くなるか、それともしおれるか。二つしかないわけですよ。
 なんかこうして我慢だの努力だの意志だのと必要な大切なものを次々に持ち出して人が潰れるさまっていうのは、植物を育てることによく似ていると思います。液肥ってありますけど、私あれが好きでよく植物の根に差しては枯らしてたもんです(笑)
 意志も大切です。
 頑張ることも大切でしょう。
 しかし大切で重要なものばかり次々に持たされると、人って結構簡単に潰れるんですよね。
 


 ・張飛という武将がいました。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%B5%E9%A3%9B

 劉備の義弟で、劉備、関羽、張飛として有名です。
 武勇に秀でており、関羽をして「私より10倍強い」と言わしめた武将です。
 ただ酒が好きで失敗も多くしている武将です。
 

 袁術(えんじゅつ)が徐州に攻めてきた際に、劉備が出陣し張飛は守りを任されます。
 「酒は飲まない」
 「部下に乱暴しない」
 と劉備と約束しますが、張飛は部下がよくやってるということでねぎらうために宴会をし、部下に暴力を振るって、呂布に徐州を奪われることになります。張飛は徐州を3日保つことができなかった。
 この約束というのは決して難しくなく、ハードルも決して高くはなさそうですが、でも張飛は守ることができなかったんですよね。これにあまりにも恥じ入って、張飛は自害しようとしますが、劉備と関羽が止めに入ることになります。
 「今お前が死んだところで徐州が戻ってくるわけではない」
 と言って張飛を説得し、徐州を奪った呂布のところに頭を下げて客人として住まわせてもらうことになります。


 まあこの話はちょっとハードルが低すぎる気もしますけど、劉備が出した約束というのは簡潔で分かりやすいですよね。
 「酒は飲まない」
 「部下に乱暴しない」
 こういって低い目標を立てて張飛と約束するわけです。


 でも張飛はそれを守ることができなかった。
 死なせてくれと言う張飛に
 「それで徐州が帰ってくるわけではない」
 と諭す。
 ここでバカ野郎3日持たないってのはどういうことだと責め立てるのは容易いことです。


 でもそうはしない。もう終わったことは仕方がない。諦めてその状況でできる限りの最善を尽くす。
 順番は逆で後半→前半になるんですけど、劉備が張飛に示したことというのはまさに菜根譚に沿っていると言えるのではないでしょうか。






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