孫子の兵法は役に立たない?






 孫子の兵法は本当に役に立つのかどうか。
 そもそもそんなに広くのことに対して応用できて効くものなのか。
 いろいろ本が出てるけど、じゃあ一冊くらい読んどかんといかんのではないか。
 なんでもかんでも正解を与える、言ってみれば魔法の書が孫子なのではないか。


 これらのことに対して色々見てきた私が言えることは、孫子の兵法は何にでも応用が効くほど汎用性が高く、一度は読んで研究しといた方がいいんじゃないか、なんてことじゃ全然ありません。
 むしろ、孫子の兵法はすっげえ効く素晴らしいものであるどころか、逆効果であると。役に立つか立たないかどころでなく、自らの身を滅ぼすことがあるとすらいえるのではないのかということです。
 それが言いすぎであるとすれば、少なくともその破壊力は自らをも傷つける場合があるよという言い方でやんわりと表せるでしょう。
 

 一番いい例が、それが孫臏(そんぴん)のものであろうと孫武(そんぶ)のものであろうと(一応通説は孫武だそうですが)、その後その兵法を使った国がどうなったかということです。


 ・孫武はそれによって呉を大きくしました。
 確かに連戦連勝だったことを思えば、孫子の兵法は効果的であり、素晴らしくよく効いたといえるのでしょう。
 ところがそんなに単純に話がまとまるほど世の中が単純であるかどうかです。


 勝ちまくって勢いに乗った呉は諸侯の仲間入りをしようと焦り、焦った呉は突っ走っていき、そして滅亡を迎えます。背後から越に襲撃され。首都を落とされ国力は衰退の一途をたどることになりますが、王にはそれがわかりません。
 この呉という国がそんなことになろうはずがないと現実を否認し続け、呉は越によって滅ぼされました。


 確かに連戦連勝はそれ自体いかにも効果的な様を表しているようですが、その後の破滅を呼び込む要因になっていると言えます。
 連戦連勝で驕り高ぶり、意見を聞かなくなり現実が見えなくなった呉王はひたすら突っ走ります。
 これを思えば、いやこれを仮に思わなかったにしろこうして一挙に勝ちまくった呉がなぜ滅んだのか。
 ここで、「孫子兵法」のある一面が浮かび上がってくると言えるでしょう。


 ・一方孫臏(そんぴん)の場合はどうだったか。
 孫臏は宿敵である龐涓(ほうけん)を見事に打ち破ります。
 そうして魏を打ち破り、斉は一気に強国中の強国となります。
 ところが、そううまくはいきません。
 大功を挙げたはずの総司令である田忌(でんき)は讒言(ざんげん)を受け、斉を出ることになります。
 さらには魏を臣従させ、ぞんざいに扱います。
 これによって斉は魏を叩きのめしただけでなく
 「なんてむごい目に遭わせるんだ。血も涙もない」
 諸国から白い目で見られることになります。
 趙を助けるための魏との戦いだったはずが、趙からも白い目で睨まれることになります。
 そして趙と楚とに攻撃を受ける羽目になります。


 となると、確かに孫臏兵法は素晴らしいものだったに違いありません。
 敵を余すところなく徹底的に打ち破り、自軍の被害は最小限。
 戦果としてはこれほど素晴らしいものはないでしょう。


 ・でもそれはそれです。
 その程度でしかないと言ってもいいでしょう。
 魏との戦争が終わった後に、斉の中では莫大な戦果のある田忌をそのままにしておくことはできません。田忌は死ぬか追放される以外の道はなかったと言っていいでしょう。
 それに魏との戦いはそれは圧倒的であったとしても、趙や燕、楚、さらには秦などの国はまた別に考えなくてはなりません。
 所詮、局所戦でしかないのです。
 大局的に事態を見据えたうえでの、ほんの一部に過ぎない。
 その一部であまりに勝ちすぎることが、結局はバランスを崩すことがあるものです。
 こうして斉はせっかくの大戦果がありながらも、田忌を自ら追放し、さらには趙と楚とに攻撃されて勢力を削がれてしまうことになります。


 ・こうして孫子の兵法を使ったそのおおもとを見てみると、皆そろいも揃って破滅に突き進んでいる感じがあると言っていいでしょう。
 せっかくの戦果をおさめながらもったいない、というう感じですがそうではないでしょう。
 むしろ戦果を挙げることがすべてを狂わせ、破滅に導いているといっていいでしょう。
 ちょっとのプラスが、最終的には大きなマイナスを導いている。
 一手先では大勝利でも、二手先は大打撃。
 三手先は滅亡寸前。
 なぜこうなったのかをしっかりと見据える必要があるでしょう。


 ・これは言ってみれば宝くじが大当たりした人の末路に似ていると言ってもいいでしょう。
 大金に当選した人の大多数がその後(一説によれば)ほぼ100%に近い確率で破産したり不幸に末路を迎えていたりします。
 孫子の兵法も宝くじ当選もきっかけに過ぎません。

 ところがそのきっかけをうまく使うことができず、それどころかむしろ破滅の方へと向かってしまう。
 https://money-academy.jp/lottery-winner-then/


 こうしたことを考えれば、孫子の兵法は役に立たないどころではなく、破滅をもたらす意味合いの方が強いとすらいえるのではないでしょうか。


 ・宝くじや賭博、ギャンブル。
 そうしたことへの誘いの手はたくさんあるものですが。
 孫子の兵法への誘い(いざない)も似たようなものだと考えると、これだけ本屋に「孫子の兵法案内」が並んでいるのも納得だと言えるのではないでしょうか。
 今回はそんなことを考えてまとめてみました。








この記事へのコメント

  • 孫子兵法は当初の中国全土に渡り使われていたことが記されている以上呉の繁栄が孫子の目的ではないことが考えられます。戦場においても系統論を薄く浅く堅く展開し法則を生み出すことにはたけていたのかも知れません。
    2021年04月08日 14:37
  • きんた

    今となっては戦術と戦略の違いなんて便利な言葉で表せますが、前漢の頃は孫子は常識的なものではあっても、それを使いこなすことが非常に難しいものだったと言えると思います。それこそ生兵法とかいう言葉もあるくらいですから。
    それを思えば、広まったところで誰がきちんと理解して使いこなせようか、ということは意識としてはあったように思います。韓信とかは不思議とその真理に到達できたのかなと考えています。

    > 孫子兵法は当初の中国全土に渡り使われていたことが記されている以上呉の繁栄が孫子の目的ではないことが考えられます。戦場においても系統論を薄く浅く堅く展開し法則を生み出すことにはたけていたのかも知れません。
    2021年04月08日 22:34
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