苦肉計(三十六計34、敗戦④)







 苦肉計(くにくけい)……「苦肉の計」
 →敵を信用させるために敢えて自分を傷つける。



 ・解説……人は普通自らを傷つけたりはしないものである。従って害を受ければそれは必ず真実である(とみなされることになる)。真実をもって偽りとし、偽りをもって真実とすれば、間者は成功することができる。子どもが吉である、というのは流れに従う従順さがあるからである(ということを踏まえる必要がある)。「童蒙の吉なるは、順以て巽なればなり」(どうもうのきちなるは、じゅんもってそんなればなり)。


 ・解説の解説……これも『周易』から。間者が成功するには幼児の自然の様子を見習えという話。




 韓信が東征に出るときに、劉邦一同が通ってやってきた、そして焼き払った蜀の桟道を再建築させるということがありました。しかし短期間で一気に作れ、作れんなら全員まとめて打ち首だというとんでもなくひどい命令だったので、あまりの過酷さに建設者は皆悲鳴を上げると。そしてそれは楚の間者によって報告されているという状況で、偽りの脱走兵を楚に向かって逃がしました。
 すると楚の方では、間者の報告と一致しているし、韓信とはこんなバカな命令を下すやつだったとはと大笑い。喜んで大量の脱走兵を仲間に加えました。


 すると韓信の方では蜀の桟道はあくまで形だけであって、実は秘密の間道を使って侵攻を開始していたのであって、いきなり現れた漢軍に楚は大慌て。しかも脱走兵は漢軍が近づくと一斉に城を乗っ取り始め、韓信は被害を出すこともなくあっさりと城を乗っ取ったと。
 これも蜀の桟道を極めて短期間のうちに作らせるというアホな計画を敵に信じ込ませ、あまりのひどさに、こりゃあ脱走兵が楚に逃げ込んでも不思議はないという状況を作っていたがために成り立つものであって。そうした前提があれば自然と敵は信用すると。これこそ苦肉の計だと言えるのではないでしょうか。


 →教訓:韓信は敵に信用させるために自然な流れを演出していた。




 また、別の例では前回の黄蓋による百叩きからの曹操への降伏などはそれこそ苦肉の計ですし、勝つため、呉のためなら老齢でも百叩きに耐えてみせるという覚悟は凄まじいものがありますよね。これくらいすりゃあ疑り深い曹操でも信用する、というより曹操を信用させようと思えばここまでのことをしなければならないといういい例でしょうね。勝つため、その前段階としてここまでやって初めて信用させることができると。大胆かつ繊細、演技とはいえ百叩きを受け、恥に耐え、耐え難きを忍ぶ。老齢の黄蓋には命の危機だとすら言えるでしょうが、その危険を冒してでも勝つために尽力する。
 そこまでして貫徹すべき忠誠、執念、自らの仕事に邁進するという気骨、その覚悟には本当に頭の下がる思いがします。



 →教訓:黄蓋は勝つために徹底的に、かつ細心の注意を払って命の危険も顧みず苦肉の計をした。


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