反間計(三十六計33、敗戦③)







 反間計(はんかんけい)……「反間の計」
 →反間はスパイのこと。敵のスパイを利用してニセ情報を流させ敵側を混乱させる。



 ・解説……疑中の疑。疑いの中にさらに疑いが増す。敵は自らスパイの情報に寄り添っていき自滅する、こちらは何も失うものなどないのである。「之に比すること内自りすとは、自ら失わざるなり」(これにひすることうちよりすとは、みずからうしなわざるなり)。


 ・解説の解説……内自りすの後の「とは」なんですがこれはない方がいいんじゃないかと思って省いて訳しました。これ、即ちスパイの情報というのは敵地から直接持ち帰ってきたものであって、これを信頼した上で自らの方をそれにすり寄せていく。比べていく。あくまでその情報を信頼しすり寄っていく、それで自ら自滅していくのだと。自ら(は)失うものが何もなく、自然と勝てるのだと。
 まずスパイは非常に信頼されているということ。そしてその情報は絶対のものであって、敵側はそれに食いついていく。スパイの情報を当然のように信用する。策略や計画、作戦は全てそちらに寄せていくことになる。だからそのスパイのもたらす情報が狂っていれば、敵は自ずと崩れていく。あとは何もしなくとも勝てる。それがこの作戦だと。
 これも元は『周易』の表現で、内から外に比しむ(したしむ)とは自らの真心を失わないことであるとのこと。



 スパイの話がメインになっていますが、スパイの話、スパイの情報はあくまで優先順位が高いもの、あくまで最優先のものであってそれは別にスパイネタでなくてもいいと思います。自らが大きく信頼しているもの、自然と優先しているものが狂っていればそれの妄信は自滅に等しいのだと。
 これは美人計などにも通じるもので、あくまで最優先のもの、最も中枢にあたる物を狂わせること、破壊することが敵を破壊するには最も効果的だということを言っているように思われます。勝つわけではなく、敵が自ずと負ける。滅ぶ。そのようにもっていくと。
 その意味で美人を計略に用いること、反間即ちスパイを計に用いること、それぞれ手段は違いますがやろうとしていることは同じだと言ってもいいでしょう。



 周瑜が赤壁の戦いの前に黄蓋を百叩きの計にして、「恨みに思った黄蓋が寝返って曹操に降伏する」というシナリオを考えたことがありました。で、周瑜陣営には蔡中、蔡和(さいちゅう、さいか)という人が来ていましたが、これは曹操からのスパイだったわけです。
 ただ黄蓋を百叩きにして曹操に降伏させようにも、黄蓋は先々代の孫堅の代から呉に仕える宿将であって、そんな人物がただ周瑜とケンカしたから、イヤになったからといっても曹操は信用しないわけです。


 でもそのスパイからの情報があるとなれば話は違います。
 「黄蓋は周瑜と先日大ゲンカしました」
 「周瑜は激怒して黄蓋を斬首しようとしましたが、周囲が止めたので百叩きで済ませました」
 「黄蓋は恥をかかされ心底周瑜に恨みを抱いている様子です」



 そういったことを蔡中、蔡和からの密書で聞かされ、さすがの曹操もこりゃ本物だなと信用したというわけですね。
 ところがこれは演技であって、偽りの降伏をする黄蓋は自身の船を燃やし、火攻めで曹操の大船団を一気に焼くことに成功するわけです。



 ところでこの話は非常に手が込んでいます。
 ①蒋幹(しょうかん)という周瑜の昔なじみの男が周瑜に降伏を勧めるために周瑜の陣営に行きます。
 ②そこで蔡瑁(さいぼう)というもともと劉表の配下で、今曹操の水軍を責任者として指揮する男の密書を見つけます(これは周瑜が偽造したものです)。
 ③それを持ち帰った蒋幹は曹操に密書を見せ、蔡瑁は処刑されます。これによって曹操軍唯一と言っていい水軍に長けた将軍を排除することに周瑜は成功します。
 ④このことに気付いた曹操は悔しがりますが、これを利用して逆に周瑜陣営に、蔡瑁の親戚である蔡中と蔡和を送り込むことを画策します。蔡瑁が処刑されたことを恨みに思って降伏しましたという筋書きを考えるわけです。
 ➄周瑜の方ではこれを看破しますが、つまり曹操と直接やり取りするには非常に都合が良いなと判断し、二人をそのままにします。曹操としてはスパイとして利用している気持ちでいますが、そのことを周瑜によって逆に利用されてしまうわけです。
 ⑥で先述の周瑜と黄蓋による大ゲンカを起こします。
 ⑦黄蓋が曹操に寝返りたいというのですが、それをバックアップしたのは蔡中と蔡和です。で曹操は降伏を信じます。
 ⑧降伏するはずの黄蓋は攻撃を開始し(赤壁の戦い)、蔡中と蔡和はその前に神にいけにえを捧げる名目で周瑜に殺害されます。
 



 反間計としてこれほどピッタリくるような話はなかなかないでしょうね。
 始終曹操の上をいった周瑜の見事さが伝わってくるような逸話だと思います。それだけにけっこう複雑になってる話なわけですが(笑)





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