借屍還魂(三十六計14、攻戦②)






 借屍還魂(しゃくしかんこん)……「屍(しかばね、又はかばね)を借りて魂を還す(かえす)」
 →文字通りの意味:他人のしかばねを借りて生き返る。
 →広がった意味:一度衰退した勢力が別の権威を持って復活してくること。


 前提として中国では、人が死ぬと死ぬと魂(こん、精神)と魄(はく、肉体)とに分離するという思想がある。儀式で魂を呼び戻して復活するには肉体が必要だが、ここで他人の肉体を借りる、という意味合いのものになるのだそう。


 ・解説……明確な方向性や目的のある者から、「肉体」を借りることはできない。特に明確な方向性や目的のない者は、「肉体」を借りることを自分の方から他者へ求めてくるものである。うまくその「肉体」を活かすことのできないものから「肉体」を借りてこれを使うという事は、あたかも自分が幼子を求めるのではなく、幼子の方から自分を求めるようにすることのようである。


 『周易』中に「我、童蒙を求むるに非ず、童蒙我を求む」という記述があるのだと。この意味は、無知な子どもをしっかりと教育する、啓蒙するということなのだと。




 「虎の威を借る狐」とかなり近い意味合いの言葉かなと思います。自分では力はないけど、虎の側にいれば安全安心。威張ることもできる。そのように自分は力がないけど強者の威を借りれば堂々とすることもできると。かなりそういう意味合いの強いものだと思います。



 ・項梁(こうりょう)は項羽の叔父(おじ、この場合は親の弟の意味になる。ちなみに伯父は親の兄になる)です。反秦を旗印に立ち上がった後に、知恵者である范増(はんぞう)を仲間にします。范増が言うには、まとまるには大義が必要だと。項一族は項燕(こうえん)などを出した楚の名門なので、楚の復興を大義としたらどうかと提案します。それは良いと項梁はそれを秦を倒し楚を復興することを大義とし、かつての楚の人々は項梁の下に集まってくることになります。
 これも范増による積極的な「借屍還魂」の一例でしょう。これによって「大義」を掲げることで団結し士気も上がり戦力も増すのだとすれば、計略としては非常に優れたものだと言えるし、まあ小勢力の悲哀と言いますか、ある意味常套手段だとも言えるでしょう……(笑)



 ところで、項羽は後にこの時王として立てた懐王を殺害します。勢力が大きくなるにつれて方針が違ってきて懐王が邪魔になったからですが、ある意味用済みだとも言えるし大義は偽物だったと示すことにもなりかねないでしょう。戦力を手っ取り早く増やすにはこれは非常にいい方法かもしれませんが、それが後々足かせとなる場合もあること、そして方針が分かれた時などは結構厄介な問題に発展しかねないことを、このことは示しているようにも思えます。事実、劉邦は項羽の主君殺しを大義にあげて戦っていますから。
 →手っ取り早く戦力を増すには便利でいいが、後々のことまで考えておかないと痛い目にも遭いかねない。


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