声東撃西(三十六計6、勝戦⑥) 改
声東撃西(せいとうげきせい)……「東に声して西を撃つ」
→文字通りの意味:東を攻めるように見せかけ、西を撃つ。あるいはよそを攻めると見せかけて狙いを定めた場所を攻める。
「曹操と袁紹とが対峙した官渡の戦い(かんとのたたかい、紀元後200年)において曹操は前線の白馬(はくば)を包囲された。早速白馬に向かおうとする曹操だが、軍師である荀攸(じゅんゆう)がそれを止める。手前の延津(えんしん)へ向かい、ここから黄河を渡河して袁紹の本陣を狙うそぶりを見せる。それによって袁紹は白馬から軍を移動させる。そうした状況で白馬に向かうならば容易に白馬の包囲網は打ち破れるでしょうと。曹操はそれに従い、袁紹はそれに合わせて動いた。
これによって、曹操は袁紹による白馬の包囲を破ることに成功するのである」
・解説……敵の意志が乱れており思考ができないというのは、「下が坤(こん)で上が兌(だ)で構成されるもの」である。これに従って自ら考えることができない状態に乗じて、敵を破るのである。
・解説の解説……↑これも『周易』の表現。敵が、乱れたり集まったりをしている時は、要するに統率が取れていないのだと言いたい。即ち上からの意志が届いていない、混乱しているのだというもの。敵側の統率がしっかり取れていない、統率力が低下しているからこそ右往左往する。そうであるからこそ、こうした作戦はうまくいくのであると。
→広げた意味:「え? どっちを攻めるの?」という混乱を敵側に引き起こすことは戦闘においては非常に効果的である
孫子は「兵は詭道なり(きどうなり)」と言ってますが、これと大意は同じかなと。要するに戦争とは化かし合いなんだと。弱くても強く見せかけ、強いのをいかにも弱く見せかける。十分であっても全然無いように見せかけ、全然無くてもいかにも十二分にあるかのように見せかける。
これは韓信もやってますね。蜀から出陣する前に、焼かれた蜀の山道を再建させるために工事を開始する。楚の方ではあの山道を復旧するとなれば何年かかるやらと高をくくっていたら、なんとそれは見せかけであって別道から急襲した、と。楚の密偵(みってい、スパイのこと)を欺くために蜀の山道を工事するように見せかけたというわけですね。
現実に応用して使おうとすれば、まあ「武士は食わねど高楊枝」……くらいですかなあ(笑)
→教訓:武士は食わねど高楊枝は恐らく兵法修行なのかなと(笑)
・また、そうした工作があって混乱が引き起こされそうな状況であっても混乱しないような士気、統率が取れた軍隊どころか、その混乱に乗じて悪さしようとする連中を一気に殲滅しよう、なんて意図を持てる集団は非常に強いですよね。
工作に乗る集団、乗らない集団、工作を逆手に取る集団。そういう区分はあるのかなと思います。
とりあえずこれで「勝戦」は終わりです。
追記等あったら、タイトル横に「改」で書いていきますので。
この記事へのコメント