タクティクスオウガ㉔ 虐殺の妥当性と正当性の検証




 バルマムッサの虐殺の選択肢、どちらを選んだかをいろいろな人に聞くと、最初は虐殺に反対したと答える人が大半だった。少なくとも私の身近では全員が最初反対していたし、私も反対の立場をとっていた。そこには特に考える要素がないわけではないが、いや虐殺なんてダメでしょう、そんな卑怯な行いをしちゃいけないでしょう、こういう場合は反対した方が普通正解でしょうという脊髄反射的なものが多くある、というよりほぼ99%がそうした要素ではないかというような気さえする。それを別にいけないとかおかしいとかここで批判したいわけではない。ただ、私個人としては年を追うごとに虐殺肯定の方が余程リアルな選択肢だと思えるようになったし、この選択肢で虐殺反対を選んだほぼ全ての人は恐らく選んだのとほぼ同じ動機から、リアルでは虐殺肯定派になるのではないかと思うようになっていった。そうした矛盾、ゲームでは一見正解と思えるような選択肢がまさにリアルにおいてもそれが正解と思えるがゆえに、虐殺を肯定するのではないかという、そうしたものをこうした場で取り上げて分析していければと考えている。



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 さて。
 超汚いノートで恐縮だが、上の図はバルマムッサの虐殺におけるLとCの違いを書き表そうとしてみたものである。
 ①~④はそれぞれ1~4章だと思ってもらえればと。


(1)
 左図でLルートを示してみた。Lルートを選んだ場合、デニム一行は生存を第一に考えている。手段が汚い汚くないは二の次、ここには死んでしまって一体なんになるといった空気感がある。つまり手段が汚かろうと汚くなかろうと、理想が素晴らしい純白な未来だろうと、そんなことはここではどうでもいいのである。とりあえず一段築ければ、それが白だろうと黒だろうとどうでもいい。段が築けていれば次がある。しかし全滅してしまっては次がないのだから。とりあえず一段築く。それがここでは具体的には虐殺であり、デニム一行は手を汚す。しかもそれをガルガスタンのせいにする。お腹の底まで真っ黒けであるが、そとっつらは純白、それどころか正義そのものである。



 そうして②、つまり二章に進んでみると、ロンウェー公爵は思ったより出来が悪い。「指導力の欠如だ」とレオナールに言われる始末である。ウォルスタ存続のためなら、もはやロンウェー公爵を殺害して誰か別の指導者を立てる他ない。
 こうしてなりゆきでレオナールと共謀し、ロンウェー公爵暗殺計画がスタートする。レオナールであろうと、デニムだろうと暗殺、裏切りという暗部を背負ってもらう必要がある。ここで重要なのは、誰が純白の側になり、誰が真っ黒になるかである。この操作は一章でバルマムッサによって正義と大義名分を勝ち取り、責任をガルガスタンになすりつけたのとまったく同じものが見受けられる。実際は共犯だけど、そんなことはどうでもいいことである。
 「理想」というのはここでは最終的に真っ白な境地、正義であり民意を獲得した状態になるだろうが、それまでの過渡期は少々グレーであっても仕方ない。「一足飛びに理想を実現できるはずがない」という言葉の通り、まさにこの時点は過渡期であり、少々白黒が混じっていても仕方がないのである。


 ③、三章でデニムが突きつけられるのはこうした点である。自分では真っ白な立場、まさに純白であり潔白な立場にいることはわかっている。だが同時にやってきたことは真っ黒であることにも気づいている。虐殺ではガルガスタンを悪者にした、そのおかげで自分たちは大義名分を獲得できた。虐殺を主導したロンウェー公爵を殺害し、それを共謀したレオナールも殺害した。そしてそうした行いから出てくる汚点を全て他者になすりつけてきている。他者が汚れてくれるからこその潔白を実現できている。ところがそこから一枚剥いでみれば何から何まで真っ黒なのはデニムは承知しているのである。
 ザエボスの言うところの「偽善者」や「ご都合主義」、「民を欺き……仲間を欺き……そして自分をも欺くのだな……」というのはまさにここを衝く。民衆と仲間を騙すときは表と裏、つまり真っ白に見せかけつつその内は真っ黒という点で騙す。ところが自分を騙すときには、この表と裏という使い分けを忘れることによって騙すことになる。即ち自分自身は真っ白であり、潔白であることを主張し、汚れ仕事を引き受けてきたガルガスタンやレオナールといった犠牲を忘れる。ところがいくら声高に主張しても汚点は目につく。見える人には見える。知っている人は知っている。主張された潔白も真実も偽物であるのはばれていく。まして、虐殺に暗殺にと次第にやっていることが広がっているのであれば尚
更である。
 そして三章の最後でデニムの内心の声が描写される。犠牲を、その犠牲の上に成り立つ自分というものをいくら忘れたくても忘れられない、それができたら楽になれるのかという絶望と願望とが混ざったような心境がここにはある。最初の図で言うところのまっさらな境地、理想の境地などとても到達しようもない。それどころか自らのどす黒さはより深まったように、これから先も深まっていくようにすら感じられる。


 Lルートをこうして示してみたが、これと対比してCルートを示そうと思う。
 Cのデニムは最初から最後まで理想を貫くことを主張する。Lのデニムはバルマムッサで生存が第一優先であり、そのためなら手段を選ばない、その後に修正していき理想に到達すればいいという立場だった。しかしCのデニムは最初から理想を示す。生存や滅亡よりも理想を優先させる。だからこそ卑怯や犠牲を微塵も許さないし、その姿勢はCルートを通してより洗練され磨かれていくことになる。それは真っ白でなくてはならないし、黒く汚れるような余地が微塵もあってはならないのである。その理想までの経路ももちろん真っ白でなくてはならないがゆえに、追っ手に全滅させられるか否か以上に、バイアンたちが仲間救出を依頼してきたときには困っている人を助けなくてはならない。バルマムッサで虐殺を断った、生存以上に理想を選んだデニムにはこの程度のロスは朝飯前であると言える。
 レオナールの誘いを断って再度アシュトンに戻ると、今度はガルガスタンの残党を攻撃しようとする。カチュアも指摘しているが、この時のデニムはもともとあった現実感覚の欠如が一層際立っている。
 普通ならば、デニムに懸賞金を懸けているウォルスタ解放軍とガルガスタンの残党が戦い合ってくれたならばその分だけデニムは安全になるはずである。二つの勢力が戦力を損なった状態になれば、デニムの安全は確保されやすくなり、またそのどちらを叩くことも容易くなるはずである。現実感覚があり少しでも自分に有利なように状況をもっていこうとするならば、そうした計算、打算をここで入れるはずだが、デニムはにはそうした感覚がこの時皆無であるといえる。いや、敢えて一切入れないよう視野に入れないようにしている。バルバトス枢機卿やロンウェー公爵、司祭ブランタと違う道を選んでいるという事を示すため、それはどうしても必要なことであっただろう。ガルガスタンやウォルスタなど関係ない、困っている人の助けになりたい、そのために戦いたいと言うデニムはひたすらに自らの前に見える理想を説く。理想を貫こうとする。



 そこにザエボスが現れる。
 ザエボスはデニムに言う。
「他人のために戦うとぬかすかッ!
 正義ヅラした偽善者めッ!」
「そう言って何人の人間を殺した?
 貴様の手も血で汚れていよう。
 所詮、俺もお前も同じ穴のムジナだ」


 理想のために常に純白であろうとしたデニムだが、このセリフによってそうしたデニムの中の理想像は大きく痛手を受けることになる。他人のために戦うと言いながら人殺しをする。何らうしろめたさのない理想を体現しているようでありながら、実際には理想の実現のためには現実的な努力を、理想を現実に引き下ろすための何らかの手を打っていかなくてはならない。そうした目線から見てみると、デニムの行動は虐殺は
していない、他人のために戦うとはいっても、沢山の人を殺害してきて血塗れである。後ろめたさが全くないどころではない、手を汚しに汚して純白どころではない。真っ黒、いや真っ赤に染まっているではないか。
 そうして考えてみると、この「偽善者」という指摘はデニムの理想像と認識自体を転覆させかねないほどのインパクトを持っていることに気付かされる。結局、いくらリクツをこねたところで現実に対処していかざるを得ない。現実を見ないように、打算や計算を入れないよう、純粋な理想を体現しようとしていたのはそうした形であるアピールでしかなく、そうしたアピールなら誰だってやっていることである。ロンウェー公爵だって虐殺を実行しながらも、その汚い部分は全てバルバトスになすりつけてきた。
 じゃあデニムは? その「純粋な潔白」をアピールするために一体何人殺してきたか、そうした犠牲や漆黒の部分を踏み台にしていないとどうして断言できるのか。
 それは結局構図として考えた際に、批判しているロンウェー公爵らの構図と何一つ変わらないものとなる。違うのは各々が主張している理想だけである。この指摘によって、ザエボスは理想が違うだけの構図の存在を指摘した。これはバルマムッサの住民の言っていた「ただ首がすげ替わるだけ」ということでもある。虐殺への反対から徹底して理想を貫いてきたはずのデニムは、これによってその唱える理想と、その力強さとを剥奪されるのである。




続きは明日に(笑)

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