タクティクスオウガ㉓ フォルカスの理屈を分析する




 デニム一行はアシュトンからタインマウスまで出てくる。しかしそれはヴァイスの策略であり、デニムはタインマウスを中心としたウォルスタ包囲網の中に陥れられることになる。

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 アシュトンまでの退路を断たれ、アルモリカへは当然行けない。そうなると必然的に高い確率でクリザローの方面に出てくるというヴァイスの計算が的中したことが、ガナッシュのセリフから読み解くことができる。

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 しかしクリザローから先どうなるかはヴァイスはどうもあまり予測していないらしいところを見ると、クリザローでデニム一行は全滅あるいは捕縛して終わりだと見ていたか、あるいは「おまえだけはこのオレの手で殺してやるッ!」の言葉通りデニムを逃がして泳がして、いつかは自らの手で殺害するということが案外ヴァイスの計画の中には入っていたのかも知れない。
 そこらへんは定かではない。ともかく、クリザローでデニムたちはフォルカスと出会うことになる。

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 フォルカスはデニムたちが古都ライムまで行かなくてはならないと言うのを聞いて提案する。
 デニムたちの戦力ではタインマウスを抜けることも厳しいだろう。
 だから自分たちの仲間を助けるのを手伝って欲しい。
 仲間を助け海賊をやっつけることができたなら、海賊に奪われた船を使って海路古都ライムまで送ることができる。フォルカスはこうしたことをデニムに伝える。

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 カチュアはこれを聞いて言う。「ずいぶんと虫のいい申し出ね」

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 いかにもデニム一行を助けるかのような提案ではあるが、実際は海賊に捕まった仲間を助けたいのはフォルカスの方だろうに。そうした魂胆がみえみえでありながらも、さもデニムたちにうまい話があるよと話を振ってくるのである。つまり全滅の危機にあるデニムたちは、全滅を避けるために、足元を見られてその戦力をフォルカスによって買い叩かれているに等しい。これによってフォルカスは後腐れなく、しかも逆に恩着せがましい形で戦力を借りることになる。


 これはウォルスタにゼノビア勢が来た時と状況はよく似ている。アルモリカ城は落としたいしロンウェー公爵を救出しなくては近日中に処刑されかねない。しかし、ウォルスタには戦力がたった3人しかいない。どうにかして戦力をかき集めなくてはならないが、かといってゼノビアから後々まで恩着せがましいことを言われ恩に着せられるのも癪である。
 ここではフォルカス一人しかおらず一人でクァドリガ砦へ行って救出することはほぼ不可能である。本来はその形が主体だが、幸いデニムたちも全滅しかかっておりなんとかして難を逃れたい。そこでフォルカスが提案することで図式は逆転する。デニムたちが全滅から逃れるために自分が手を貸してやろう、いい提案をしてやろうとするのである。これは持ちつ持たれつではない。あくまでも全滅しかかっているのはデニム一向であり、助力しているのは、アドバイスをしているのはフォルカスである。そういう形を取りたい。



 結局ここで何に主眼が置かれているかと言えば、一体誰が戦力を必要としているのか、一体誰がそこに力を貸し与えるのか、そしてそのことによる後腐れはどうなのかである。フォルカスの提案はなぜこのような言い回しなのかと言えば、恩は着せたいけど恩は着せられたくない。そして「困っているデニム一行を助けたフォルカス」という立ち位置を確保したいということに他ならない。どうしても「仲間を助けたいけど一人ではどうしようもなかったところにデニムが現れて救出してもらいました」という形は避けたいのである。



 こうしてフォルカスはデニムの足元を見つつ、状況を俯瞰しつつ、自分たちにとって一番いい「形での」協力を可能としたのである。これがいかに画期的なことかと言えば、アルモリカ城攻略前のランスロットらとの会談の風景、それからアルモリカ城を奪還した後にロンウェー公爵が執拗にゼノビア一同を質問攻めにしていたところからも見て取れる。


 これからアルモリカ城を攻めようというときに、ヴァイスは俺たちだけじゃムリだと素直にランスロット一行に援軍を願う。それに対しデニムは「我々だけで大丈夫です」ということもできる。これは、アルモリカ城を仮に攻略できたとしても、その後万が一ゼノビアからの影響が及んでくることを恐れているものだと見做すこともできる。
 すると、ランスロットは提案する。

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 こう考えてはどうか。
 我々はこれからアルモリカへ発つ。
 これは君たちの手助けをするためではない、我々は我々の信ずるもののために戦う。
 たまたまその場所が一緒なだけで、だからひとまず共同戦線を張るというのはどうかと言うのである。


 なぜこうも回りくどい言い方が必要なのかと言えば、これは助力ではない、恩に着せたりするつもりはないからそっちも恩に着る必要はないのだ、つまりこれは「助力を願う」というような話ではないという事を言おうとしているのである。事実、ランスロット一行を助けてもゼノビアから干渉されるようなことはないわけである。それにロンウェー公爵を処刑前に緊急で助けないといけないとなればこうした形を用意してでもとにかく一刻も早く救出をしたかった。
 そうして、後腐れはないよということを徹底して強調している。
 そしてロンウェー公爵の救出は成功するのだが、ここでも議題は結局ゼノビアから干渉は今後あるのかないのかということで終始する。


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 力は足りないし、力がもらえるならそりゃあ欲しい。
 でも恩に着せられたりするのはいやだし、まして後から牽制されたり発言権を行使されたりしたらまさにローディスがバクラムを傀儡としたように、ウォルスタもゼノビアの傀儡となりかねない。ロンウェー公爵はそれを恐れたのである。後腐れがいかにいやなものであるか。それはあたかも、飲んでもいい酒を飲んだら「1杯100万円」の高級酒でありその代金をツケで払っといてやったからと恩に着せられ、あとからそれを恩着せがましく言われるのに等しい。発言も行動も抑制され牽制されることになり、自由であってももはやそれは自由だとは言い難い。もはや自由という体裁を取り繕った傀儡でしかないだろう。だからこそロンウェー公爵はその後腐れがないことを徹底的に確認せねばならなかったし、証拠の提示までもランスロットに迫ったのである。


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 その次元での話の成立を、フォルカスはあの短時間でのデニムたちとの話し合いで成立させることに成功したのである。ゼノビア勢とウォルスタ勢は結局後腐れはあるの? ないの? といった話し合いと腹の探り合いを続け、結局カチュアが「騎士様は一命を賭して協力してくださいました」と言ったことでうやむやの内に協議は終わってしまう。一体後腐れがあるのかないのかははっきりとしない。いかにもなさそうだが、しかし果たして今後全くないとも言い切れない。そうした不信感と触れてはならない領域にこの話題は放り込まれてしまう。解決ではなくこれは保留といってよい。
 フォルカスはここでのあの短時間の話し合いから、ヴァレリア解放戦線にとって都合のいい形での「助力」を引き出すことに成功した。しっかりと簡潔に話しながら、なおかつ自分たちに有利な形で話をまとめ上げる。後腐れらしい後腐れもない。それどころか相手に貸しを作ったに等しい。ゼノビア勢がいくら述べても信用がなく、グダグダと不信感の中話が進むのとはえらい違いだと言っていいだろう。
 この貸しは、後に繋がっていくことになるのだがそれはまた後で。



 ヴァレリア解放戦線という組織が孤軍奮闘しつつ、どこからも戦力を借りることができぬまま孤立無援で滅び去ったことを考えても、このフォルカスの交渉術とその交渉感覚はこの当時として非常に優れているものだという事ができるだろう。あのヴァレリア解放戦線の状況というのはまさにフォルカスが活躍すべき場面だと思われるが、セリエの中にはどうもそうした頭はなく、成功は独力で後腐れなく成功させねばならないという思いがあったようである。そうした組織内にこのフォルカスという人材がいるということがヴァレリア解放戦線の皮肉のひとつだとも言えるかも知れない。あるいはそういう組織の下にいれば、組織を反面教師としてそういう感覚というのはいやでも研ぎ澄まされていくものかもしれない。

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 「人の弱みにつけこむような話を……」
 「だって……」
 話が決まった後でもカチュアはしぶる。フォルカスの側にも弱みがあり、戦力がないがためにこうしてデニムたちの力を借りなくてはならないわけである。デニムたちは命がけで戦い、フォルカスの仲間を救出しなくてはならない。なんだかんだと言ったところで言いくるめられた感と恩着せがましい感とで釈然としない。
 このカチュアの考えは正しく、フォルカスの方でもそれを思っていたわけである。騎士(ナイト)なのに、まるで商人のような交渉をし、相手の助力を買い叩き自分の手助けを高値で売りつけるかのようなやり口。これが己の心に恥じるところが大いにあったのだろう。仕方なかったというにはあまりにも高圧的で居丈高に話をし過ぎた。そうしたところが、バイアン救出後にまさか自分の首を締めることになるとは思いもしなかっただろう。


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