タクティクスオウガ⑮ ヴァレリア解放戦線とセリエの思想





 ヴァレリア解放戦線が1章で行った行動は主にパレード襲撃事件と、古都ライムでの補給物資強奪事件である。パレード襲撃事件については暗黒騎士団に被害がない上に市民を巻き添えにしている時点で悪評を広め、大失敗だったというのは先に述べた。また、システィーナ主導での古都ライムでの物資強奪も「あのザマです」とシスティーナが言っているように、作戦失敗だった。

 この次の行動は、仲間に「無謀な計画」と言われる「ロンウェー公爵暗殺計画」である。これはバルマムッサでの虐殺に反対した場合に、2章でボード砦においてセリエ自身の口から知ることのできる計画である。



 その計画というのは、

 1.このままウォルスタはガルガスタンを吸収し巨大な戦力となる

 2.軍事力5分5分となってウォルスタとバクラムは手を組む

 3.その前にロンウェー公爵を暗殺すればバクラムと暗黒騎士団はウォルスタへ侵攻を開始し、全面戦争になる

 4.そして司祭がこの島の覇権を握ったら司祭を暗殺する

 というものである。


 ところが、司祭ブランタに唆された(そそのかされた)バルバスが古都ライムに侵攻を開始するのはこの直後のことである。


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 つまり、ウォルスタがガルガスタンを完全に把握する前の段階でブランタは既に手を打っている。従って「ウォルスタとバクラムは手を組む」というセリエの仮定は大きく外れている。そこまでブランタは生易しくなく、野心家でないような人間ではないことがここから窺われるのである。さらには意外と決断力がある人間だということも。そして、ウォルスタがガルガスタンを把握する前に叩こうという人間であること、さらには後先考えずその臆病さから先手を打って攻撃を仕掛ける小心な人間にも見えないことはない。



 ひとまず言えることはセリエの見立ては外れており、バクラムの侵攻は予想以上に早かったということである。従って、その話の上で「戦争を引き起こそうなんて間違ってる!」と主張するシスティーナらの主張は杞憂だったといえるだろう。セリエの計画にはそこまでの具体性も、力もないのだから。
 確かに古都ライムは襲撃された。戦争は引き起こされた。それはブランタという人間性には大きく起因するが、セリエの計画にはほとんど立脚していない。予測、見立て、その原因。全てが大きく外れている。


 セリエの話を聞いて「そんなにうまくいくかしら?」という感想を持つカチュアの方がよほど正確さがあると言える。



 さて、虐殺に反対した後にデニムらはアシュトンからタインマウスへ、そしてクリザローへと逃れていくことになる。ここでヴァイスがタインマウスを中心に包囲網を敷き、デニムの退路を徹底的に断っていることがわかる。デニムはまさに袋のネズミとなり、窮地に追い込まれることになる。



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 そして逃れた先のクリザローでフォルカスらと会うことになるが、フォルカスは「…ここで会えるとは思わなかったがね」と言っている。デニムらはもちろんだが、フォルカスらにしてみても予想外にここで会ったというわけだ。



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 どうもセリエの口調からしても、別にデニムらを仲間に加えようというような意図はあまりないようである。ましてクリザロー近辺で待ち受けてスカウトしようなんて気持ちはない。

 それなら、なぜフォルカスらはあの時点であの場所にいたのかをここで検証していきたい。



 まず海賊ダッザに襲撃されてフォルカスは一人で逃げてクリザローまで行き、ウォルスタ解放軍に捕まりデニムに助けられて、クァドリガ砦へ戻ってくる。そしてそこで殺されかけているバイアンを救出することになる。この時点でダッザが「女は殺すなよ!金になるからな」と言っているので、システィーナは金になるからという理由で殺されず捕虜にされていることがわかる。そしてシスティーナを救出することになるのだが、結局この3人がなにをしようとしているのか、何をしたかったのかの全貌は伝わってこない。セリエの話からそれがどうやら「ロンウェー公爵暗殺計画」の結果であることはなんとなく伝わってくるのだが。

 そして、その計画のためにシスティーナ一行がクリザロー沖を航行していたらしいことも。



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 この説明も貴重で、クァドリガ砦からダムサ砦まで、システィーナ救出までの期間しか見ることはできない。

 さて、ここで重要になるのがウォーレンレポートである。解放軍はガルガスタン軍に決戦を挑むためにスウォンジーの森に集結していることがわかる。


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 この話とヴァイスのニセ情報から、カノープスはこう分析する。

 「スウォンジーに主力が集結している今なら、後方のタインマウスは手薄になる。ならタインマウスのランスロットに会うことは不可能ではないはずだ」このカノープスの推論によって、デニムらは行動を開始することになる。


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 これとまったく同じことをセリエも考える。

 スウォンジーに主力が集結しているならば、タインマウスの方は手薄なはずであると。つまり、クァドリガ砦からクリザローへ、そしてタインマウスへと進撃し、そのままアルモリカ城のロンウェー公爵を暗殺することを計画するのである。



 ところが、

 ①仲間が数名しかいないため、そもそも戦力不足

 ②ヴァイスの計画によってタインマウスを中心としたデニム包囲網が敷かれているため、タインマウス周辺は全く手薄ではない

 ③クリザロー沖で海賊の襲撃を受けている


 さらにフォルカス、バイアン、システィーナらを主力に据えて少数精鋭による暗殺集団とするにはかなりムリがあるのではないか。ブランタという人間が「ロンウェー公爵と手を組むはず」という予測をして見事に外しているところからも、どうもセリエの計画の詰めの甘さが随所に見受けられる。百歩譲ってセリエは計画を次々と打ち立てる優秀な戦略家かもしれないが、戦術に関しては疎いと言ってもいいのではないだろうか。クリザロー沖から上陸することもうまくいかず、タインマウス周辺の別の包囲網の存在を見抜くこともできず、そもそも戦力も不足している。アルモリカ城にたどり着くことすらできない。

 アルモリカ城にたどり着くだけなら、ガルガスタンの残党の方が優秀だとすら言える。



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 セリエに対して現実に足の着いた前提での計画を説くのも酷というものかも知れない。戦力がないことはわかっていて、ないならないなりにベストを尽くそうとはしているのだから。

 それにしても、この情報をもとにカノープスにしろセリエにしろ計画を立てて行動しているのだからウォーレンレポートの立ち位置の重大さは測り知れないものがある。全く責任重大である。




 セリエは自身を「アリ」だと言っている。地を這うだけのアリであり、空を飛んでいる鳥にアリの気持ちなどわかるはずがないと。

 しかし本当にセリエが果たして「アリ」なのかどうかはかなり疑わしい。アリに見えるが、アリならアリらしく現実に立脚した計画を立てるはずである。アリに飛躍はできない。

 しかしセリエはあまりに飛躍しすぎていて、成果を残すことができていない。パレード襲撃、古都ライムの物資強奪、そしてロンウェー公爵の暗殺計画。さらにはヴァレリア島に対する俯瞰的な予測。そうしたもの全てから言えることは、全てが具体性に乏しく、ずれている。失敗が続く。ロンウェー暗殺計画でそもそもクァドリガ砦への上陸すら怪しいところからもそれは見て取れる。ならず者にも見えるあのガルガスタンの残党ですらもアルモリカ城の城門前にたどり着けているのは、セリエに対する痛烈な皮肉だと思って間違いない。あの残党ですらたどり着けているのに、ヴァレリア解放戦線はたどり着いてもいない、それどころか上陸すらもおぼつかない。

 思うに、セリエはその「アリ」にすら到達できない夢想家だと言えるのではないだろうか。地味でも地道に努力しようとするアリ、例えばレオナールなどがそうだろうが、それに対して失礼に思える。飛躍をするにもしっかりとした地盤が必要だが、セリエにはそうした地盤がない。具体性がないため、飛躍ができないのである。




 いくら計画を立てても、それを実行し実現していく人間なくしては素晴らしい計画も所詮ただの計画でおわってしまう。力なくしては何事も成し得ない。デニムたちはゼノビア勢の力を借りてアルモリカ城を奪還し、ウォルスタ解放軍を作り上げることに成功した。そうした存在がなかった場合はこうした経緯を辿り、こうした末路を辿るしかないという例だと言えるのではないだろうか。

 カノープスの言うところの「勝てば正義、負ければ悪」の一端が垣間見える話である。



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