どっかではセリエについて書くとか書いてましたが、まだまだ1章から出られそうにありません笑
平にご容赦ということで、昨日の続編です。
③昨日からの流れだが、ゴリアテからアルモリカ城までの期間にこの記事も見ることが可能である。
これが意味しているのは、ゼノビアからきた外国人が港町ゴリアテを訪れたインパクトはとてつもなく大きかったということである。珍しい外国人が来たというインパクトもあってか、来た即日に「先頃」という表現でニュースに上がってくる、言ってみれば号外とかニュース速報レベルの伝わり方をしたということである。
これによって、ウォルスタを下手に扱えばゼノビアも敵に回しかねない可能性が生まれたということでもある。ガルガスタンからしたらいじめていた相手が超強い相手と結んだ可能性が出てきたおかげで、ゼノビアによって攻撃されかねなくなっているし、またローディスにとってはこの島の争いが大陸間、強国間の問題に発展しかねない可能性が出てきたということでもある。
そうした意味では、このヴァイスのセリフはよく感情的になるヴァイスが「あーまた突っ走ってるわ」というようなものであるよりは、けっこう妥当だし常識的な線を衝いているなという感じがある。突っ走るだけではなく、意外とよく状況を俯瞰的に把握しているのである。そうなると、周りから見れば「ゴリアテの英雄」もそりゃすごいかも知れないけど、ゼノビアの力はやはりすごいなと。やはり先日来たのはゼノビアの先兵隊であって、ウォルスタを支援しているなというように見えるはずである。アルモリカ城奪還やクリザロー奪還などの情報はそうしてゼノビアによって増強されたウォルスタ像として各地に伝わっていく。
そうした中で、暗黒騎士団との非干渉条約の任務がデニムらに回ってくる。
暗黒騎士団側からしてみれば本来は、「え?弱小のウォルスタが非干渉?軍事援助じゃないの?」と言いたいところである。そりゃ非干渉はいいけど、それは暗黒騎士団やバクラムからの軍事援助はいらないと言うに等しい。つまり、ゼノビアの助力があるから間に合ってますということをウォルスタ側から告白するに等しい。そうなると、では一体どの程度ゼノビアからウォルスタへの助力があるのかをこの場で探りを入れたい、具体的に把握しておきたいという状況で、この会談はスタートするのである。
表向きは非干渉条約、しかし実際はウォルスタとゼノビアとの関係、影響力、どれほどの助力があるかを徹底的に探ることになる。本気である以上、ランスロット=タルタロスも登場する。
バールゼフォンが質問をする。ここからが本番である。
「弱小のウォルスタが勝てるとお思いなのか?」
ここでレオナールはいかにも無難な受け答えをしようとする。
「無理でしょうな」
「もともと勝とうとは思ってはいない」
「我らの願いは共存です」
「我らが他国の力を借りたとあれば、平和的な解決を志す穏健派の者たちを窮地に追い込みかねません」
この最後の返答にランスロット=タルタロスがこじつけをするようにして食らいつくのである。
ここで言いたいことは次の通りになる。
おいおい、あれだけ散々ゼノビアがウォルスタの陰にいることが噂になって広まってるってのに、自分たちでは他国から力を借りてない気でいるのかい?と。本気でその穏健派を窮地に追い込んでないとか思ってるの?とツッコミたいのである。
だからこそランスロット=タルタロスは「バクラムのように暗黒騎士団にツケを回し、他民族の反感を買うようなことはしたくないと申すのだな」
とレオナールにもわかりやすい言葉で伝えているのである。バクラムは基本的に富裕層で成り立っている。金で「傭兵」を雇ってしまえば万事解決。そうした事情を風刺して「バクラムの豚」という表現があるのだが、そういう言い回しがあること自体が他民族の反感の存在を表している。遠回しに悪気もなく「バクラムの豚」を言うのであれば、じゃあ「ウォルスタの豚」はどうなるの?とここでランスロット=タルタロスは聞きたいのである。
無難な回答をしてるはずが、まさかイチャモンつけてくるとはと意外でレオナールはたじろぐ。
しかし、ランスロット=タルタロスからしたら、渡りに舟の非常にナイスな回答をしてくれたと喜んでいるのである。まさに話題をゼノビアの方に移したかったのだから。話の振り方が無難がどうかではなく、食らいつけるかどうかによって話の推移が決まっている。
ここで沈黙するレオナールは、感付いている。ランスロット=タルタロスの言わんとするところは別にバクラムを糞味噌に言うことではなく、ウォルスタの背後にいるゼノビアの存在をランスロット=タルタロスは知りたいのだと。バクラム―ロスローリアンの図式を通して、ウォルスターゼノビアの図式を指摘しようとしているのだと。
「いや、少年少女使わないといけないほどに追いつめられているのかと心配したのだ」
それなら、普通は非干渉条約じゃなくて軍事援助が欲しいよね?とランスロット=タルタロスは言いたい。レオナールはここでデニムたちが「ゴリアテの英雄」であり、彼らの活躍によってアルモリカ城奪還が成功し、クリザローで私も命を救われましたと答える。表向きはそうであるのだが、これによってゼノビアの影響について暗黒騎士団に知られる、または悟られたり気取られたりすることを回避することに成功したのである。
いかにも「さすがはゴリアテの!」と立てられそうな話であるが、その一番重要なところは話題が完全にそっちに逸れたためにゼノビアについて暗黒騎士団が全く知ることもなく、極めて自然に会談を終えることができたことにあると言えよう。
これは会談後に、古都ライムに戻された時点で読むことができるものである。古都ライムにてガルガスタン包囲網を抜けた一行はフィダック城に入り、会談をし、その日中に古都ライムに戻っている。設定でも、フィダック城に入った日と会談を終え古都ライムにいる日は同じ日付である。従ってこの記事も包囲網を抜けた極めて早い段階で書かれたものだと推測できる。
ここでのウワサはあくまで、恐らくバクラムへ軍事援助を求めたものだろうというものである。真相としては非干渉条約であり、その真相は暗黒騎士団と恐らくバクラム、そしてウォルスタのみが知っているわけだが。
このウワサは以前の記事とは全く矛盾するような内容のものである。「この前はゼノビアから先兵隊って言っときながら、なぜバクラムに軍事援助を乞うのだ??」これが一般民衆とガルガスタン側の思いになるだろう。ゼノビアから助力があるならバクラムはいらないだろうし、来ているという信憑性の高いウワサがある以上、ゼノビアから来ていないことはまず考えられない。
なにしろ「本人たちは否定しているが」、つまりこれは極めて信憑性の高い記事でもあるのだから。
そうなると、
1.まず、アルモリカ城とクリザローを奪還した以上、この快進撃から恐らくゼノビアは本物の先兵隊の可能性がある
2.しかしそうなるとロスローリアンに軍事援助を乞う必要はない。
3.ゴリアテの英雄の力もひょっとしたらあるのかもしれない
4.そうした一切は未知数であるにせよ、ゼノビアあるいはローディスに助力を乞うことでウォルスタが国力を増そうしていることは間違いない。それによって本気でガルガスタンとやりあおうとしているその気配はなんとなく伝わっていくに違いない。よくわからんけども、やつらは本気らしいと。その前になんとかしよう、潰してしまおうと。
その意味では、この記事は情報の錯綜や矛盾を表す以上に、それによってガルガスタン側を大きく揺さぶる性質のものだと言えるのではないだろうか。少なくとも、やられる前にやれとは言わないまでも、ガルガスタンはこのままじゃやられかねないぞという危機感を煽るような性質のものであると。
ちょっと進むが、これがバルマムッサの虐殺について記載されたレポートである。「先のアルモリカ城を奪われたことによる報復とみられている」
アルモリカ城を奪って調子に乗ってるウォルスタのやつらを殺害する、見せしめとする、抵抗するならこうなるんだと示す。そうみることがこの時点では妥当な見解だということを示している。
民族浄化政策でたびたび自国民すら粛清してきたバルバトスとガルガスタン王国だが、それだけしてきたのだからましてウォルスタ民族を粛清することは容易いだろうなという空気感がある。まして、徹底的にゼノビアやローディスと工作しているらしいウォルスタを先手を打って黙らせたいだろうなと見ることはそう難くない。
ウォルスタがなんかいろいろやってるらしい。こりゃガルガスタンも黙ってないぞ、ガルガスタン側からなんかあっても不思議じゃないぞという空気感ができつつある。こうした先にバルマムッサが位置するのである。
前回のウォーレンレポートの内容が「ニセ情報」を垂れ流すようなものだったことは既に述べたが、今回の記事を見ていくと人々を「煽る」、しれっと煽動するような性質のものも中にはある、そうした悪質なものも含まれているように思われた。多くは語られてはいないが、そうした空気感を醸成し、バルマムッサについて「ほらやっぱりガルガスタンがやったよ!」という見方が妥当に思える流れがある。それをこうした微妙な表現によってうまく表現されているように感じられたものである。
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