タクティクスオウガ⑨ プロローグとその周辺について



 オープニングの動画を挙げてみた。
 この時点でデニムの父でありカチュアの義父であるプランシー神父は暗黒騎士団によって連れ去られているのがわかる。そしてバルマムッサの虐殺や古都ライムでのバクラム侵攻と同様、ここでも虐殺に近いことがどうも行われていたようである。その規模や被害者数はよくわからない。
 

 作中の話と照らし合わせると、まずドルガルア王がおり、ヴァレリア国として素晴らしい統治をしていたが王は「死亡した」、それによって国は民族毎に三つに分裂した。その後バクラムはローディスと手を組み、暗黒騎士団がこの島へと送られてきたのだと。
 そして暗黒騎士団はプランシー神父の拉致を考える。プランシーを自白させて、「マナフロア」とかいうこの時物か人かもよくわからないものが一体なんであるかを突き止め、それがカチュアの母親であると知り、カチュアをドルガルアの正当な継承者として擁立しようとすることになるわけだが、それは後々の話である。ともかく、この時暗黒騎士団にはプランシーを拉致する明確な目的があったのは間違いないものとみていい。


 そう考えると、後の非干渉条約の時にランスロット=タルタロスとバールゼフォンが交わした会話には違和感がある。
ランスロット「……あの焼き討ちの時の子らか。あれは、確か…、」
バールゼフォン「ゴリアテに反乱分子が潜んでいる情報で攻めましたが…。」
ランスロット「ニセ情報だったというアレか…。そうか、では恨むのも当然のこと。」
 勿論いつでも正直に話すようなことをすることはないわけだが、打ち合わせを事前にすることは恐らく考えにくいとなると咄嗟に出たものと考えるのが妥当だろうが、ここで「ゴリアテはニセ情報を信じて攻めたものである」という情報がウォルスタ側に伝わることになる。そうなると、当然死んだだろうけど、一応安否確認をしたいカチュアは振り向くが、公私混同だと思いなおして、あるいは聞くまでもないことだ、愚問だと自分に言い聞かせ、何も言わず部屋から出ていくことになったと考えるのが妥当だろう。



 さて。暗黒騎士団はカチュアを擁立し、ドルガルアの正当な後継者を示そうとしていた。
 それはプランシーの最期に語るところによると、ドルガルア王の遺産を狙ってのものであると。遺産を手にしたらカチュアはやつらに用済みとして殺される。プランシーはデニムにそう言い遺したし、デニムもまたカチュアを救わねばと尽力する。
 ところが、この時既にランスロット=タルタロスはゼノビアからブリュンヒルドを盗んでいた。王の血族しか墓の封印を暴けないらしいが、ブリュンヒルドさえあれば封印は解けるのである。そうなると単純に墓を暴いて遺産を奪うだけなら、島への上陸時点で既に可能だったことになる。
 ブリュンヒルドを探していたランスロット一行は、この島へブリュンヒルドが来ていることを突き止め、島へ渡ってくる。どうも、盗んでそのままローディスへ持ち帰るつもりだと思っていたらこの島へ持って来ていたということだそうである。
 ウォーレンは言う。「私たちの目を欺くためなのか、それとも何か他に理由があるのか」



 バルバスとマルティムは縛り上げたバールゼフォンからブリュンヒルドを取り上げる。
「ローディスを裏切ったのは、あんたたちだろ!?」
 ブリュンヒルドさえあればドルガルア王の遺産は手に入るのがわかっていながら、王女を探させたり擁立したりしていた。いかにもローディスの命令に従っているようでありながら、実際には遺産を独り占めしようとしている、とマルティムはランスロット=タルタロスを疑う。
 しかし、ランスロット=タルタロスがそういう人間ではないことは本編を見ていればわかることである。まさかあのランスロット=タルタロスが莫大な遺産狙い目的の単純な動機でそうしたことをしていたのであればそれはそれで面白そうな気もするが……。
 なぜブリュンヒルドを盗んだのか。なぜそれをヴァレリア島へ持ちこんだのか。なぜブリュンヒルドがあれば遺産は手に入る、それで命令としては達成できただろうものを敢えて正当な後継者による統治にこだわったのか。「……どうせやつらの手には負えん」の言葉の意味は。そうしたことの多くが本編では語りつくされてはいないため、真意はわからない。
 この時点で、暗黒騎士団No3であるヴォラックが(マルティムの言う、ブリュンヒルドさえあれば王墓の封印は解けること、それをランスロット=タルタロスは知っていたこと、知っていたのに王女を探して擁立したりとムダなことをやっていたこと、ローディス本国からの命令をクリアするだけなら最初の時点でできていたこと)「本当なのですか!団長!」と言っていることを考えると、このことはどうも団長であるランスロット=タルタロスとNo2であるバールゼフォンくらいしか知っている人物はいない。バールゼフォンがそれを知っている事実はないが、ブリュンヒルドを持たせられていることを考えると、そうした事情は告げられている可能性が濃厚であるといえる。なぜバルバスとマルティムがその事実を知ったのかは不明だが、ヴォラックになぜ伝えなかったのかという暗黒騎士団内のその線引きが垣間見える場面でもある。



 少なくとも、ランスロット=タルタロスはプランシーの予想とは違って、恐らく遺産を手に入れたら用済みだからカチュアを抹殺するとは考えていなかったのではないか。個人的には、ヴァレリア島の統治をある程度視野に入れていたような気がする。別に平和をもたらそうと考えるわけではないが秩序をもたらすことが必要だという認識はあったのではないだろうかと考える。


この記事へのコメント

にほんブログ村 ゲームブログ ゲーム評論・レビューへ
にほんブログ村