タクティクスオウガ⑧ 作戦立案ヴァイスの場合その3

 今回もまたヴァイスの話になる。ただし、今回はCルートのヴァイスになる。
 Cルートの場合、ヴァイスで特筆すべき出来事は、デニム包囲網、デニムとの一騎打ち、ブランタへの取り入りの基本的には三つだろう。以下でそれを分析していく。



 ①デニム包囲網
 ヴァイスはデニムをおびき出すため偽情報を流す。タインマウスの丘に聖騎士ランスロットが来るらしいとの噂である。それにつられてデニムたちはタインマウスの丘に出向いていき、退路を断たれて窮地に陥る。幸いクリザロー方面へ逃れることができて、海へと逃れることができたが、デニムたちは非常に危うい目に遭った。
 ヴァイスはこうした状況を作るために様々な構想を練ったに違いない。偽情報はいかにもデニムがつられるような内容だし、カノープスがこの話をデニムに勧めてきたわけだから、ランスロットとカノープスでの間にはやりとりはなかったことがわかる。さらにはタインマウスでもしも自分がデニムにやられた時のためにデニムの退路も断っている。事実デニムはアシュトンに戻れなくなった。ここから非常に用意周到で計画性があり、しかもそれが結果としては成功していることがわかる。Lのヴァイスもそうだったが、どうももともとヴァイスには計画性とその計画を成功させるため実現化させる能力が、少なくともその片鱗が備わっているかのようである。たまたまこの場合はデニムたちにクリザローに逃れられてしまうのだが、そうしてみると残念ながら詰めは甘いようである。またはLに進んだほどは徹底的に詰める能力が伸びなかったのかもしれない。ともかく、ヴァイスはデニムを取り逃がしてしまうのである。


 ②一騎打ち
 アルモリカ城でヴァイスはデニムと一騎打ちをする。基本的に会話ばかりなのだが、この一騎打ちは絶対にデニムが勝つ。その意味では、どうもヴァイスのデニムの力量に対する見通しはかなり甘いものがある。己の力量を過信しているか、デニムを過小評価しているか、あるいはそうした力量を度外視するほどまでにデニムに対する憎悪が強かったのか、あるいはそのいずれもが当てはまるのか。ここではデニム包囲網を敷いた時のような周到さや計画性は一切見て取ることができない。激情のまま、ただ感情の赴くままに行動する面のみである。一章であったような感情のまま突っ走るような部分が維持されているか、助長されているかのように見える。



 ③ブランタへの取り入り
 ヴァイスは周到に工作をする。まずはランスロット=タルタロスに会見して、古都ライムでの会見を申し入れる。
 それからアルモリカ城へと戻り、ロンウェーをその会見に赴かせる。
 そして二人を暗殺し、それを手土産にブランタのもとへと寝返る。そういう構想を持っていた。このことはデニムとの一騎打ちで感情的に
なったヴァイスが少しだけ漏らしている。
デ「違う!利用されているだけだ。価値がなくなれば殺されるだけだぞ」
ヴ「それが仲間ってもんさ。
  オレはおまえみたいなガキじゃねぇ。
  ガキのおままごととは違うんだよ。
  利用しているのは俺の方さ。
  仲間にしてやっているんだ、俺がッ!」 
 自分はロンウェーやレオナールにあくまで使われてはいない、むしろこの関係性で主体性を持っているのは自分の方だと主張する。話を自分のいい方向へとうまく誘導していこうとする意図が既にこの時点でヴァイスの胸中にあったことをうかがわせる。
 そして工作をしてロンウェーを殺害し、ランスロット=タルタロスをあわやというところまで追い詰めることに成功する。これもまたそうした、ヴァイスの計画して自分の考えた通りに物事を運んでいこうとする才能に長けたところを感じさせる。ところが不運によって逆に自分の身が危うくなり、次の瞬間にはヴァイスはランスロット=タルタロスに命乞いをする羽目に陥る。


・『ヴァイスの命乞い』
 ヴァイスはここでなりふり構わず命乞いをする。
 ①そそのかしてきたのはブランタの方である(実際にはヴァイスの方)
 ②自分は暗黒騎士団には恨みはない
 この二点を主張し、さらには生き残るためならなんでもするという過剰な卑屈さを演出する。その過剰な卑屈さがランスロット=タルタロスの美学とは相反するものであったようであり、「おまえには戦士としての誇りはないのか……?」と問われる。
 「へ、へへ、へへへへ。
 …あ、あんたの言いなりになるから」
 とヴァイスは返す。つまりこれはそんな誇りなどは一切持っていませんというアピールになる。野心めいたものはなりを潜め、生き残れるのならばランスロット=タルタロスに隷属でもなんでもしようという態度を示す。ランスロット=タルタロスにはこれが非常に不快だったようで、戦士としての誇りのないものを部下などにしたくないとでも言いたげに失せろと言い放つ。
 バルバスやマルティムなども一応暗黒騎士団の中には入っている。バールゼフォンやヴォラックなどとは毛色が全く違うようであるが、単純に粗暴なだけではなく、恐らく「戦士としての誇り」をランスロット=タルタロスが垣間見ることのできる瞬間があったりしたのだろう。古都ライムを勝手にバルバスが襲撃したこともあったが、ゼノビアのランスロットと戦ってみたいという「戦士としての誇り」を感じさせるような部分をランスロット=タルタロス自身がけっこう好きだったのではないかと。だから後方配置にバルバスが不満を漏らすような場面でも理をもって説得したりしている。おとがめなしでも喜ぶべきところ、それを後方配置で済むのならラッキーだと普通なら思う場面で怒り出すバルバスを、変わってるなではなく戦士としての誇りとして解釈していたのではなかろうか。
 だからこそ、後々にデニムとの戦いで逃げ帰ってきたバルバスに大きく失望することになる。そこには戦士なら、戦士としての誇りが強く感じさせてきたバルバスが実はそうしたものが一切ないことが露呈したからではないだろうか。「口ほどにもないやつめ!」と珍しく罵ったところも、バルバスは戦士としての誇りのある人間だというタルタロスの見方や期待を大きく裏切ったことによるのではないかと思えるのである。


 さて、大きく話が逸れたが、ランスロット=タルタロスにはそうした戦士としての誇りを感じさせるものを好み、そうでないものを毛嫌いするようなところがある。ランスロット=タルタロスが非常に不快だったのは、ヴァイスが奸智に非常に長けており、ロンウェーとタルタロスの首を引っ提げてブランタへ下ろうとする計画性、計画の大胆さ、そして実行力と計画性を備えながらも、戦士としての誇りをこうも感じさせない人物だと思ったこと、そしてそういう小人物に自分自身が追いつめられてしまったことにあるのではないかと。ヴァイスがその嗅覚でタルタロスのそうした戦士としての誇りを好む部分を嗅ぎ取ったかは不明であるが、ヴァイス自身があの絶体絶命の場面で生き残るならばランスロット=タルタロスに徹底的に嫌われることが必要だった。そして見事に徹底的に嫌われることによって難を逃れるのである。
 

 その後、ブランタに尻拭いとして処刑されるところを見通せなかったのは残念だが、こうした話はCルートのヴァイスの能力の高さを物語るものではないかと思ったので書いてみた次第である。
















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