孫子③謀攻編1、2
さて。
ようやく③謀攻編に入りましたよ。とんだアクシデントのおかげで一生懸命書いた2000字がとんじゃいましたよ笑
いくら泣いても泣きたりぬわ笑
さてさて。
1
孫子は言う。
戦争の原則としては敵国を戦わずに降伏させるのが上策であり、打ち破って屈服させるのはそれに劣る。
軍団を無傷で降伏させるのは上策で、打ち破って屈服させるのは劣る。
旅団を無傷で降伏させるのは上策で、打ち破って屈服させるのは劣る。
大部隊を無傷で降伏させるのは上策で、打ち破って屈服させるのは劣る。
小隊を無傷で降伏させるのは上策で、打ち破って屈服させるのは劣る。
こういうわけだから百回戦い百回勝利を収めるというのは、決して最高のものではないのである。
戦闘しないで敵を屈服させるというのが、最高に優れたことなのである。
なんかようやく孫子らしくなってきましたね笑
続けて2もいっちゃいましょうかね笑
2
だから、最上の戦争は敵の陰謀を破ることであり、次に敵と連合国との関係を破ることであり、その次は敵の軍を討つことであり、最もまずいのは敵の城を攻めることである。
城を攻めることというのは他に手段がなく、やむを得ず行うのである。
櫓や城攻めの車を備え、城攻め用の道具を準備するのは三ヶ月もかかって初めてでき、土塁の土盛りは三ヶ月もかかってようやくできる。
もしも将軍がそれを待つ間、はやる感情を抑えられず総攻撃をかけるというようなことになれば、兵士の1/3を戦死させてしかも城は落ちていないという事態に陥りかねない。
これが城を攻めることの害である。
従って、戦争の上手い人というのは敵兵を屈服させてもそれと戦闘したのではない。
敵の城を落としてもそれを攻めたのではない。
敵の城を落としても長期戦で落としたのではないのである。
必ず「全」すなわち無傷のまま獲得するという方法で勝利を争うのであって、そのため軍も疲弊することなく完全な利益を得ることができるのである。これが謀(はかりごと)で攻めることの原則である。
孫子の頭の中にある意図や概念が薄々伝わってくるかのようですね。
楽して勝つ、その無傷である状態が強いわけだし理想的なのであって。
これが戦ってしのぎを削って勝つってことになればこちらが傷つく。そうなると敵につけこまれる隙が生まれるかもしれない。いや、間違いなく隙はできるでしょう。
万全な状態で最も理想的な状態である、だからこそ戦わずして勝てる。最も楽に勝てたからこそ、次の戦いも理想的な状態でいくことができる、そうすれば戦わずして勝つこともできる。
「楽をする」これが最も理想的な状態だと言ってますね。
百戦百勝する将軍は、それはそれで素晴らしい将軍だとは思います。その時々に応じた戦術を練り、それによってその場その場を勝っていく。勝利を収め続けていく。なかなか誰にでもできることじゃないと思いますが、しかしそれは決して最高のものではないと説く。やっぱり戦争してその時々で消耗するからでしょうね。兵士は傷つくし、物資は損耗するし。それでも勝つ・・・それはそれでいかにもすごいように見えます。
一例をあげれば、韓信と酈食其(れきいき)なんかぴったりな事例でしょうね。
韓信はまさに名将。次々に城を落として無敗を誇る。誰もが韓信と聞けば震え上がるほどになり、次は斉の番だという状態になった時。
そこで酈食其が斉を交渉して漢に従わせることに成功するわけです。
「韓信は今や飛ぶ鳥を落とすほどの勢いです。韓信に滅ぼされるくらいなら先に降伏された方が、斉王の地位は安泰です」
韓信の話を引き合いに出して交渉するわけですが、斉王はその通りだと降参することを決める。
その時点で漢軍は戦わずして斉の70城を手にいれることができた。長いこと戦ってきた無敗を誇る韓信よりも、一瞬で斉を降参させた酈食其の方が功績は遥かに上回ってしまったわけです。
その結果としては不幸にも韓信が斉をそのまま攻めることを決断し、酈食其は釜茹でとなり煮殺されることになるのですが、それは今回は余談ということで。酈食其という人はまさか韓信がそのまま攻めることを予期していなかったことに詰めの甘さはありますし、漢王もそこまで調整していなかったし、韓信としてもそうせざるを得なかった事情はあるわけですが。そちらに酈食其の非はあるわけですが、基本的なところでは非常に孫子のここで言っている内容に沿っている。
酈食其という人がここでやろうとしたことは、まさに理想的な「戦わずして勝つ」であったといえるのではないかなと。
・漢軍には韓信がいる、無敗のまま斉の近くにまで来ている。
・このままでは韓信に滅ぼされる。
・でも早く漢王に降伏すれば斉王の地位は安泰である
こうした事情をちらつかせることによって斉王を戦わずして一度は降伏させた、これはまさに理想的なものであったといえるのではないかなと。
互いに傷つかず、斉の勢力をそのまま取り込むことを意味し、そしてそのため他の国に(特に楚に)隙を見せることもない。これは一応まさに理想的な勝利だといえるのではないかなと思いますね。
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