戦国策8 太史敫(きょう)の娘の話

毎回2000字以上ってのは心折れますが笑、挫けず書きますよ(もう挫けてるとか言わないように笑)


・斉の湣王(びんおう。戦国策5でも出た人ですね。王孫賈のくだりですね)
が殺された時、その子の法章は姓名を変えて莒(きょ)の太史の家の雇人になった。
太史敫の娘は法章の風貌を類まれなものと見て恋心を抱き、ひそかに衣食を与え情交を深めていった。
そのうち、莒や斉の臣の間で身を隠していた旧臣が集まり湣王の子を探し出して王に立てようとした。そこで初めて法章は莒で自ら名乗り出た。人々はこの法章を立てて襄王(じょうおう)とした。



・襄王は太史の娘を王后に立て、そして子の健が産まれた。
太史敫は「仲人も立てずに嫁入りした娘は我が家の血筋を引くものではない。我が家の歴史を汚しおった」と言って死ぬまで会わなかった。しかし君王后(太史敫の娘)は賢婦人であり、父が会わないからと言って子としての礼を欠くことがなかった。


・襄王が死に、子の健が即位して斉王となった。君王后は秦に丁重に仕え諸侯には信義を失わなかった。そのため健が王位についてから四十余年の間、他国の侵略を受けなかった。
秦の昭王は使者を遣わしてきて、君王后に玉を組み合わせた環を贈り、「斉には知恵者が多いということだが、この環が解けるかどうか」と言ってきた。君王后はその環を控える臣に見せたが、誰も解き方を知らなかった。すると君王后は椎(つち)を手に取り、環を叩き割り使者に礼を述べて「謹んでお解き致しました」と言った。


・君王后が病にかかり臨終も迫った時、健を戒めて「群臣のうち、用いるがよろしい者は・・・」と言いかけた。健が「どうか書き取らせてください」というと君王后は「よろしい」という。
筆と木札とを取り寄せていざ聞こうとすると、「この老いぼれはもう忘れてしまったよ」という。
君王后が死ぬとその後后勝(こうしょう)が斉の宰相となる。秦の間者から多大な金玉を受け取り、斉の賓客たちを秦に送り込んだので、賓客たちは皆斉王に秦に入朝するように勧め、戦いの準備をさせなかった。


太史敫の娘がこれでもかと優れているところが列挙されている感じですね。形よりも本質を見抜く眼を持っている、そんな印象ですね。
・まずは先見の明。いかにも「効果」を理性的に優先して書いているかのようですが、そしてこの書物が戦国策であることもあってやはりいかに効果に準じるかということも念頭に置かれていると思うんです。恋という感情と結果という打算との合一。それは本来は求めるべきものではないのでしょうけれども、しかしたまたまか狙ってかこうしてこの人は合一に成功している。それをどこか賞賛するおもむきってのはあるのかなと。まして感情に走って破滅する例が古今東西少なくないだけに尚更ですね。それがまさか王の息子だとは。さしずめ大当たりってところじゃないのかなと。


・ところが父はそれに怒って二度と会わないわけです。普通ならば「でかした!さすがはわが娘!」なんて言って手放しで喜びそうなものをまったく真逆な対応をする。
ここには恐らく知恵があるのではないかなと思うんですね。知恵、その深淵がある。そんな予感がある。
恐らくここで父は「破格の僥倖」の前に喜びたい気持ちはあったと思うんです。さすがはわが娘だと。でもそうして喜んだ結果はどうなるか?
恐らく人のねたみを買うでしょう。そうすると自分や家、娘にあらぬ被害が及ぶかもしれない。人のそうした感情の恐ろしさとあらぬ噂の恐ろしさは枚挙に暇なしだといえる。
「僥倖」、これが素晴らしいならば素晴らしいだけ報いも恐ろしいということをこの父は、いや父娘は理解していたに違いない。


・僥倖を手にした娘に対しもう二度と会わない、勘当だと無茶苦茶を言う父。恐らくそれは僥倖のプラスに匹敵するだけの苦しみを「表現した」に違いない。なぜ表現か。人々の心を静める必要があったからです。
「いや、父さんあんた何もそこまでしなくとも・・・」
そこまで思わせる、それによって僥倖分の報いを受けるかもしれないその可能性を消すことに全力を傾注している。
娘が「そんなひどい父に対しても礼を失わない孝子」として描かれていますが、とんでもない。表向きはそうですが実質は全く異なる。これだけ父が精一杯の賢を示している、それがわからぬ娘ではない。父は災いを遠ざけるために敢えてそうした振る舞いをしている。感情を殺し、娘夫婦の幸せを生涯影から祈ることを決めている。
ひどいどころではない、まさにこの父にしてこの娘あり。こんな話どっかでありましたね。この弟にしてこの姉ありみたいな話が。
この話もそうでしょう、まさにこれだけ賢い父がいる、だからこそ礼を失しない賢い娘がいる。そしてそれを阿吽の呼吸のように分かり合える信頼関係がある。


・そして娘は后となり、王を支える。
強国秦の脅迫に対しても毅然として環を破壊して応えるほどの気丈さ・・・気丈さとそれを裏付ける協力な根拠。豪胆さを感じさせる。
その后が「おいぼれは忘れてしまったよ」と言って投げ出してしまい、その後斉が凋落する様子が描かれている。この様子はまだ分析できそうにないのでそのうち思いついたら書きます。





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